新月まだ酔い醒めぬ頃


[09]新月、おやすみなさい。


彼女が目が覚めないまま、

三日が経とうとしてた。


このまま、
目が覚めないまま、
二人とも死んでしまうのか。


あ、そういえばまだ
名前も知らなかったっけ。
・・・・・





ただ、
呆然としている他無かった。



ただ、
二人が普通に生き、

二人が普通に出会ったら、

また違う運命で結ばれる事は
確信できるだろう。








ただ、
この彼女との運命の短さに、
両手を顔に覆って
大粒の涙を
足下に落とす事しか
僕には出来ない。







『ねぇ…。』


彼女から急な細い声。僕は初め、
何がなんだか
分からなかった。



『えっ。・・・・』



ようやく気付く、
彼女が目を覚ました事を。



『私の・・・名・前。』





『君の名前??』






『う・・・ん。
私・・の名前・・。
・・・月魅。』





『つきみ?
良い名前じゃん。
てか、あんまり喋るな。
・・・・体、悪くなるだろ。』






『ありがと。・・・・
私・・もう・・・・
長くは・・・無い・よ。・・・・
君のな・まえ・・
教・・・えて・・・』





『そんな事言うな。

・・・・・・・・・・僕の名前は、月夜。
・・・・
これからずっと
名前で読んでよ。』






『つ・・き・や・・。
綺麗・・・な・・名・前。』






ようやく名前を知った。
二人。
だけど、
長くは続かない。・・・・・・
僕は分かりたくなかった。
けど、分かる他無かった。・・・






『ねぇ、・・・・・。』


彼女からの声。




『うん?』






『月・・・みたい。』





『月?
まぁ、月魅の体調が
良くなってからな。』





『お・・・願・い。』


この一言で
僕は全てを悟った。
もう彼女は・・・・・・。






『分かった。』

力強く返事を返すと。ベットから起き。
彼女の方に向った。



酸素マスクを外し。

大量の点滴の管も
彼女の腕から抜き去っった。

彼女を車椅子に乗せて。


病院の屋上に向った。






『綺・・麗。・・だ・ね。』






『・・・・うん。
・・・・綺麗だ。』






『月・夜。・・・・。
あ・・りが・・・・と・・う』






『どうも致しまして。』





彼女を車椅子から起こし、
小さいベンチに運ぶ。


力が入らないのか。

彼女はぐったりと
僕の肩に頭を寄り掛けている。






『私・・。
生まれ変わっても・・
月夜に会いたい。・・・・・・
もし、会えたら。
また、友達になってくれる?』





涙が込み上げてきたが
まだ僕の目からはこぼれない。





『友達かぁ!
今度は彼女になって欲しいな。(笑)』






『ありがとう。・・・・私で・・・良ければ。』

と言って、
彼女の体から
生気が抜けるのを
肌から感じた。





泣いた。
涙が枯れる事は無かった。





しばらくして、
自分が持ってた、
煙草に火を着ける。




ふと空を見て見ると。
綺麗な満月が
僕たちを照らしていた。


見とれていた。


綺麗な満月に。







僕の指から
煙草が落ちるのと同時に


僕の命が尽きるのが分かった。・・・・




『天国に行っても、
君を探しに行くよ。
永遠に。』








月明りに照らされた。

街。


二人寄り掛かっている。



the END


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