第41章
[65]
「おい、上まで行ったら、俺様に何をさせようってんだ!」
あっしは階段に沿って飛び続けながら、マフラー野郎の横に並んで問いただす。
「なあに、着けばわかるさ。今は話すより走る!」
マフラー野郎ははぐらかすように言うと、途中の踊り場を滑り込むように勢いよく体を切り返して、
一足先にひょいひょいと段を駆け上って行った。あっしは壁に激突しそうになりながらも
どうにか寸前で向きを変え、その後を追っていった。
また絶対ろくでもないことを企んでやがるのは間違いねえ。あっしは確信していた。
このままほいほいとついて行って、本当に大丈夫なんだろうか。だが、下からはあっしらを追う
団員達の足音が着実に迫ってきている。百貨店内には、どこかから逃げ出してきたポケモン達が
店内を走り回っていると注意喚起するアナウンスも鳴り響いていた。随分な大騒ぎになっている。
こうなってしまっては、もう敵はロケット団員だけではない。きっと百貨店の従業員達も、
あっしらの姿を見つけたら騒ぎを収拾するために捕らえにかかってくることだろう。もし捕まってしまえば、
変装したロケット団員共がぬけぬけと飼い主と名乗り出てきて引き渡されてしまうに違いねえ。
深く考え込むような暇は、あっしには与えられなかった。
「あ、あと、どれくらいだい。流石に、もう、限界、だよ……」
ぜえぜえと息を荒げながら、ニャルマーは尋ねる。
「もう少しでえ。ここまで来たんだ、諦めんな!」
足が遅れがちになり始めたニャルマーを、あっしは叱咤した。百貨店は六階建てだと聞いたことがある。
今上る階段の途中に貼り付けられた階数を示すプレートには、『6F/R』と刻まれていた。
最上階の屋上はもう一踏ん張りだ。
最後の一段を越え、あっしらははほうほうの体で縋りつくように最上階まで辿り着く。
だが、その極狭い空間の先には希望ではなく、関係者以外立ち入り禁止のプレートが掛けられている、
硬く施錠された扉が待ち構えていた。
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