第26章
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日の位置からしてそろそろ人間達も活発に動き始める時刻だ。
トキワの森はニビシティの南。おつきみ山を目指す者などで人通りの多いと思われるニビシティの南東を避け、北側から回り込むように南西に抜けることにした。
それにしても――ここは三年経ってもあまり変わらぬ町並みだ。おつきみ山の変化を見て、どうなっていることかと思っていたが。相変わらず大きな建物は少なく、ヤマブキシティのようにびっしり所狭しと軒を連ねてはいない。
まあ、その方が人間が比較的少ないということで俺達にとっては都合がいいのだが。
ニビシティ北の林の中を進んでいると、不意にマントの裾をくいと引っ張られる。なんだ、という言葉と共に肩越しに振り返ると、アブソルが興味深そうに前足でニビシティの方を指し示す。
「あれ、なぁに?」
示された方角を見やると、十メートルくらい離れた先に青いビニールシートがかけられた大きな建物が見える。あの辺りは確か博物館か何かがあったはず。周りに資材のような物が置かれていることから、改装工事か何かをしているのだろうか。
「人間が自分の巣を作り替えているのだ。危ないから近寄るんじゃないぞ」
アブソルはふーん、と答えた後、再び博物館の方を前足で示した。
「でも既にあの子、近寄ってるけど……」
その先ではムウマージが、工事現場の脇に乱雑に積まれたがらくたの山らしき物を何やらごそごそやっていた。
「何をやっている! 早く戻ってこい」
俺がそう叫ぶとムウマージはこちらを向き、いつもの気の抜けた返事をして道具袋を隠し持ったスカートの辺りをごそごそしながら戻ってくる。
どうやらまた何かくだらない物を拾ってきたらしい。ムウマージのおかげで道具袋の中はいつもがらくたばかりだ。ビーダマにおはじき、手の取れかけたような人形、他にも様々ながらくたが沢山。有益な物は本当に少ない。
「きらきらつるつるしてて、うすいちゃいろでとうめいな、いしみたいなのひろったー。まんなかにちっちゃいむしがはいってるんだよー」
ほくほく顔でムウマージは戦利品を語る。だが、どうせいつものように大した物ではないだろう。
さあ、早くニビシティを抜け、トキワの森へ向かうとしよう。
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