第三章 迷い〜そして戦場へ〜


[21]第五七話



 量子反応弾が投下された戦闘地域では、再度地上戦が展開されていた。





 ここはその戦闘の一部を担っている第八区画。
 自衛隊と科学技術省の混成部隊が活動している場所だ。


「戦闘続行だ! 目の前の敵を撃ち落とせ!」


 部隊長の命令が下されると、隊員達は一斉にマシンガンを撃ち鳴らした。


「くらえ!」

「化け物どもがぁ!」

「ここからは一歩も通させはしない!」


 恨みを吐き連ねつつ各人がトリガーを引く。
 核兵器に勝るとも劣らぬ大量破壊兵器により敵の戦力は激減した。しかしながら、それが使われるまでに彼らの同胞が何人も殺された。









 これほど憎い敵はないと言わんばかりの勢いだが、この光景は見るに堪えない。
 見方によっては虐殺ともとれる形勢なのだ。それでも魔力によって障壁を作る魔物を倒すのは容易ではない。


「うわっ!」

「大丈夫かっ!」


 敵の放ったカマイタチのような衝撃波が隊員の一人を切り裂いた。
 その切れ味は凶悪犯も驚愕するような鋭さで、傷口から血が溢れている。


「ひぃっ! た、助け……!」


 今度は即死だった。
 仲間の負傷に怯えた隊員が、槍のような形態をした雷に心臓を貫かれた。


「救護班は負傷者を回収! 生きてる奴は弾幕を維持しろ! 魔導部隊が来るまで耐えるんだ!」


 指示を出しながらも、自身も二刀流の応用で両手にマシンガンを持ち、一体ごとに確実に潰していく隊長。




 落ち着いているようで、心の内では様々な感情が入り交じっている。






 隊員が一人、また一人と倒れていくのを視界の隅で認めながらも撃ち続けていた。
 そして自分もカマイタチに狙われたその時、


「サンダースピア!」


 上空から幾重もの金色の槍が降り注いだ。
 それは敵に全て突き刺さり爆発する。


「目標を殲滅しました。次はどの地区で?」

『その場で援護だ。長距離魔力砲部隊が他地区の殲滅を開始している』

「了解ですよ、如月慶喜司令官殿」

『頼むよ。クロエ・ジ・ハード君』


 皮肉に満ちた彼らの会話はすぐに終わった。




 クロエは思わず嘆息する。






 人間と魔物とのいざこざに巻き込まれてしまうのも御神ヤヌセクタルクの導きなのだろうか。
 そんな疑問を、血迷い事だと言わんばかりにかぶりを振った。





 これもまた試練。我々は御神ヤヌセクタルクの御言葉を賜りし一族。





 この世界の住人と、我々の世界の住人とが出会う時、その仲を取り持つのが役目なのだ。
 それまでの両者の軋轢は確実に排除しなければならない。
 だから――


「愚かな闇の勢力め……人間に手を出すとどうなるか思い知るがいい」


 手にしていた槍を前に勢いよく突き出した。
 直後に起こる衝撃波。その先で重い衝撃の圧力で圧迫死した魔物が一体。


「我々が必ず世界を守る。闇ごときに倒されるわけにはいかない」


 クロエは負傷した隊員の治療を行うために、部隊長を指示を仰いだ。






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