第三章


[06]回想〔前編〕


十年前・神妙山(山頂)ー

辺りはギラギラと太陽が照りつけていた。
銀の髪に赤い眼の少年は汗を拭いながら小屋の近くで火を起こしていた。

火をもう少しでつこうとした時だ。

視界が急に暗くなったと思い見上げると五人の悪そうな人相をした男達が見下して囲まれていた。

初めにその中で一番下っ端なのか、一人だけ腰の低い男が話しかけてきた。

「おい。
お前珍しい髪の毛と目だなぁ。
お頭、コイツ高く売れるかもしんねぇですぜ!」

続いて仲間が話しだした。

「良い考えだぜ!
これだけ山を駆けずり回っても龍王は出て来ないんだ。
頭!連れていきましょうぜ!」

少年の後ろに立っている、眼帯をしたストレートの髪にスラッとした容姿の男だけが回りの男達とは違って落ち着いていた。

回りの四人は頭の反応を待ち構えていた。
「おい、歳は。」

「…三つ。」

「三つ…確かそのぐらいの年を欲しがっていた研究者が居たな…。」

「げぇ!
あのいかれた野郎ですか?!」

「確か報酬は100万だったはず…。」

「お頭!売りましょう!」

「決まりだな。
名は何という?」

「…名など無い。」

「それではこれと呼ぶ事にしよう。
連れていけ。」

「はい!
こい!」

「………。」

男は少年の目を隠し連れて行った。

何に乗っているのか解らないが何かに乗せられガタガタと何日も移動の日々が続いた。
今現在、昼なのか夜なのかさえもわからない状況である。

「着いたな。」

冷静な声が聞こえて来た。

「よし!
売りにいきましょうぜ!」

「まて!
俺一人でいく。」

「うっ、解りました。」

コツコツ…ギィィ…。

「おい『T(ティー)』、三歳の親無し連れてきたぞ!」

「ん?ああ、例の報酬の件か…。
こっちへ連れて来るんだ。」

どんどんと奥へ進み、少年はただ手を引かれているだけだった。

途中、ひたすら階段を下りて行くのがわかった。

二人は目的地まで特に何も話さず、階段を下る足音だけが辺りを響かせていた。

目的地に着いたのか足が止まった。

「…入れ。」

男に促され部屋にはいった。

「おい、ただのガキじゃないか。
銀の髪は異国には五万といる。



まぁ、実験に使わせてもらおう。」

「まぁ待て、こいつはどうだ。」

少年の繋いでいた手が離れ、目に巻いていたターパンが取られた。
瞬間、少年はガラッと雰囲気が変わったのが分かった。

「………報酬は三倍で構わんか。」

「流石に赤目は珍しかったか。
流石の俺も手放しがたかったが、貴方ならこれの価値を理解してもらえると思ったよ。
ここに決めて正解だった。」

「俺はお喋りは嫌いだ。
これを持ってさっさと消えろ。」

「話しがわかるな。
今後もごひいきに。」

男はお金の入った袋を受け取り部屋を出た。

もう一人の容姿端麗なTの男は、長い白衣の両ポケットに手を入れて少年に近付いてきた。

「君には裏の心・技・体・動・剣・魔を一睡無しに全て習得してもらう。
期間は一年半、後半年で孫一族以上に強い体・技・速を身に着けて貰う。
それ以外の質問や我々の組織や名前は一切答えない。
もしくは探ろうとはするな。
以上。
先に色んな検査と測定をしてもらう。
ついて来なさい。」

少年はワケも解らないが、ただ解るのは抵抗はしない方がいいという事だけだった。三歳でそこまで理解出来る子供はそういないだろう。

少年は言われるがまま男性についていった。


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