第五章


[04]援軍


ー掌国・大会議室ー

黒龍の契約より半月が過ぎた今、囚人の出所会議が行われていた。
珍しく王妃の春麗様も出席をしていた。

その他正面には、毘禅様・爽貴様・彫雲殿・関与殿・龍緋殿が出席していた。

入口付近には薪宮殿と監獄門番兵十人と囚人十人が並んでいた。

その囚人には王殿に垰珎殿も入っていた。
薪宮殿はいつになく真剣な表情だった。

「では、始める。
薪宮殿、垰珎の監察の最終結果を伝えろ」
「はい!
精神面・技量は安定中、体力は低下気味でしたがある程度鍛え上げれば直ぐにでも復帰は可能です。」

「よし、よくやった。
では、ここの十名に国王毘禅より命を下す。
本日より出所、及び試験合格後に爽貴率いる兵として仕えて頂く。
良いな!」

『はい!』

「…次は…」

ドサッ!

スタッ…

「毘禅様!!」

毘禅様の上から人が降ってきた。

そう、先程まで仁国にいた兵士と珀郢殿だった。

珀郢殿は華麗に着地を見せたが、兵士は毘禅様の上から落ちた。

「お父様!?
っ?!貴方は珀郢殿じゃない!」

兵士は体を起こすと置かれている状況に気付く。

「ッ毘禅様!!申し訳ございません!!」

「…いや、いい。
珀郢か、そなたの術で飛んできおったか。
しかしながら移動時はもう少し訓練をしてから参れ。

今は会議中だ。」

「はっ!申し訳ございませんでした!

毘禅様!ぶしつけながら今仁国は崇という者に攻められています。」

一番に爽貴様が反応した。

「崇?!」

「…遂に動き出したか…。
しかし、仁国には優秀な兵を送り込ませているだろぅ。」

「それが…。」

珀郢殿は一部始終を話始めた。

「なる程、崇本人も来ているか…。

これは厄介だ。
そこの仁の兵よ、良く来てくれたな。

会議は延期、直ちに仁国へ援軍に参る!

薪宮、直ちに兵長に報告…と、そこの囚人達も支度をさせ、正門に向かわせろ!」

「はい!」

「彫雲殿!第六班から全班援軍準備!
そして私が居ない間はここで第一班から第五班までの指揮を頼む!」

「はっ!」

「王殿…援軍に来てもらえるかな?
君の力を一度見てみたい。」

王殿は真剣に笑った。

「…仰せの通り。」

こうして全員が援軍準備をサクサクと進めて行った。

ー仁国・王室ー

「ついにたどり着いたか…。」

仁国国王・公角様は崇の手下に囲まれていた。

手下は扉の近くにいる者に支持をかけた。

「おい、崇様にご報告して来い。」

「はい!」

手下が部屋出てすぐの事だった。

「うわああああぁぁ!!」

廊下中に手下の声が響き渡った。

「どうした!!」

もう一人の手下が扉を開けたとたん、手下は驚いた。

「…なぜあなたが…。」

そこに立っていたのは珀郢殿と爽貴様と龍緋殿だった。

爽貴様はいつにもなく真剣で凛々しいお顔で手下どもに向きいあった。

「あなたたちが崇の手下ね!
龍緋!!」

爽貴様が龍緋殿に支持を下すと彼は笑顔で爽貴様に一礼をした。

「仰せのままに…。」

「雑魚は黙ってろ!」

『…赤龍…』

『龍緋ヨ…気安ク呼ブトハ良イ身分ダナ…』

「龍緋殿!!赤龍殿にそんな…。」

「珀郢大丈夫!これが不器用な二人の日常会話なの。」

手下二人は痺れを切らし走り始めた。

「赤龍など崇様に比べれば…」

『コ奴等ガ標的カ…童如キガ粋ガリオッテ…』

グオオォォォォォ…

赤龍は迎え撃つ敵が迫りつつ勢い良く当たりの空気を吸いつくした。
敵は龍緋殿の近くまで来た時だった。

「死ね!」

赤龍は二人にキッ!と目を向ける。

ブオオォォ…ブオオォォ…

吸いつくした空気を二度に分け吐き始めたその時だ。
二人の足元から橙の炎が舞い上がり始めた。

ゴオオォォ!…ゴオオォォ!

「ぐあああぁぁぁぁぁ!!!」

『我ヲ愚弄スルハ主ノミ…身ヲ持ッテ知ルガ良イ…』

「ぅう…崇様は…お前たちより…遥かに強い…。」

そう言い残し二人とも朽ち果てた。

「…爽貴殿、お久しぶりだな。」

公角様が部屋を出た。

「公角様!この度は周角様のお誕生会に参加できず…。」

「いや良いんだよ。
お元気そうで何よりだ。
しっかりなされて来ましたな。
龍緋殿も四国会議ぶりで久しぶりだ。
赤龍も使いこなせるようになったんだな。」

「はい。
ありがたきお言葉にございます。」

「ゆっくりしていって欲しいところだがこの通り兵は全てやられている。
情報すら入ってこない。
情けないのだがどこでどうなっているかさっぱりだ。
珀郢殿もこんなことになってしまって申し訳ない。」

「いえ、今は同盟を結んだ国同士お互い協力し合うのが先決です。
掌国の方でも毘禅様が応援のご準備をして下さってます。
スグにでも加勢に来られるでしょう。
お気づかいなく駒としてお使いください。」

「そう言ってもらえれば心強い。」

珀郢殿が続いた。

「早速本題なのですが、掌国へ移動する前ですが、崇という者が裏門の方で現れました。
援軍が最優先かと思い彼の前で掌国へ飛びましたが、それまで遼黄様と尹穂殿が足止めをされています。
盛策様と周角様は別々のお部屋でいらっしゃいますが、合流していればご一緒に行動されているはずです。」

公角様は頭を抱え込んだ。

「なんということだ…こんなことをしている暇などなかったというのに他国の王子までも
巻き込んでしまうとは…。
こんなとこで油を売っている暇ではない!
裏門へ急ごう。」

珀郢殿が足を止めた。

「公角様…周角様と盛策様が気にかかります。
お連れして戻りますのでお先に裏門の方へ…。」

「…そうだな、頼む。」

「御意!」

ヒュンッ!!

「さて、我々も向かうとしよう。」

「はい!!」

こうして三人は裏門へと向かった。















[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.