第五章
[03]脱出
ー仁国王宮・最上階ー
ここは掌国でいい別館最上階と同じ場所となる。
仁国の場合はここでは四方に二人づつ兵が見張りをしている。
ここの兵もすっかり静まり、まだ眠らされたばかりだった。
「隊長!全員眠りました!」
「よし、東北の階段より最上階までの兵士は全て支配したな。
あまり時間をかけると崇様のお顔に傷が着く…急いで下へもどるか。」
「はい!」
隊長率いる他六名の兵は嵐のように最上階を後にし出て行った。
少しして机の下でどさくさに倒れたフリをしていた若き兵がピクッと動き、辺りを見回した後にゆっくりと上体を起こした。
「どういう事だ…早く掌国にいかねば…。」
兵は剣を腰に備えると部屋の扉をゆっくり開けた。
右・左を確認をした。
廊下には転々と兵が倒れこんでいた。
(確か東北の階段から奴等は来たと言ってたな。
よし、倒れているフリをして仁国裏口に回ろう。)
兵は右に向き走り始めた。
何度か敵と対面したが、そこらに倒れている兵と倒れているフリをし、何とか城を脱出した。
ー仁国・裏口ー
門番兵数人が倒れていた。
裏口に近づいたその時だった。
「あれぇ〜?
確か兵は全て倒したと聞いているが…何故それらしき者がここにいる?」
兵は寸でのところで見つかってしまった。
声のするほうを振り向くと大柄の男が立っていた。
冷たい表情で細い目で黄色い片目が兵を見下しても見える。
「誰だ!」
「…フンッ、冥土の土産に教えてやろう。俺は数ヶ月前に出来たあの城の『四天王』崇だ。
あの世でこの名を恨むがいい!」
奴等は遂に自ら動き始めた。
崇の剣は容赦なく兵に斬りかかる。
「…貴様はただの兵ではないな…。」
崇はキッと睨み付ける。
「私が兵の代わりに来ていた。
良い情報を聞けたよ。」
兵の代わりをしたのは尹穗殿だった。
一階で丁度、遼黄様と尹穗殿に出会い、経緯を話した。
それで二人に援護をされながら裏口まで来ていたのだった。
兵は遼黄様と一緒にいた。
尹穗殿はいきなり叫び出した。
「見てるなら降りてきて手伝え!」
「わかってたの?
もうちょっと見物したかったけど…その兵を掌国に飛ばせばいんだよね?」
城の三階に珀郢殿が立っていた。
「へぇ〜、君のオツムにしては上出来。
頼んだよ。
後は僕達でしておく。」
「了〜解ッ。よっと…」
珀郢殿は三階から飛び降り、兵の所へ着いた。
「君、毘禅様のお顔は見たことある?」
「はい!この間訪問された時にハッキリ覚えています!」
「じゃぁ目を瞑って開けてと言うまで毘禅様のお顔をずっと浮かべていてね。
じゃないと異空間に放り出されて返ってこれなくなるから。」
「はいぃぃ!」
兵はギュッと目を瞑り、必死に毘禅様の顔を思い浮かべていた。
崇は援軍が来られては計画が潰れると察知した。
「くっ!させるかぁぁ!」
剣を片手に二人に素早く走ってくる。
『汝は珀郢、想像する者の所へ我らを…』
二人の回りに虹色の光が包み込む。
「どりゃぁぁぁ!!」
崇は剣を振りかざした時だった。
ヒュンッ
二人は無事その場を離れた。
「…くそっ!」
目の前に遼黄様がたっている。
「取りあえず仁国脱出成功だな。」
尹穗殿は険しい表情で崇に近寄った。
「後は私達が相手だ。
…かかって来い。」
崇 対 遼黄様・尹穗殿で戦闘の幕を開けた。
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