第五章


[02]深夜


仁国王宮では誕生日会が終了し、二ヵ国の王子も周角様と共に戻ってきた。

「遼黄、盛策、今日はありがとう!」

周角様の言葉に遼黄様と盛策様は微笑んだ。

「遼黄様、お付きの尹穗(ユンホ)様、お部屋をご案内致します。」

「盛策様、お付きの珀郢(ハクエイ)様はこちらです。」

付き人を含め四人は言われるがまま案内人の女に付いて行った。

と言っても部屋は隣同士、後は女に部屋の説明を受け終えると部屋を出ていった。

遼黄様は出ていったのを確認すると険しい表情を浮かべた。

「…尹穗。」

「シッ!」

尹穗殿は静かにするよう促し目を瞑った。

『遼黄様、何も言わず聞いて下さい。』

遼黄様は舌打ちをし、力強く目を閉じた。

「…チッ!」

二人は各一人づつ用意されたベッドの端に座りこんだ。


『何だっ?!わざわざ能力を使うな!』

『申し訳ございません。
実は天井に鼠が三匹潜んでいます。
私達だけでなく盛策様の上にも…。』

『…こんな時に…。
信頼しているが周角の仕業ではないな?』

『はい、仁国とは別の戦闘服なので。』

『仕方ない。
っで、すぐに襲って来そうなのか?』

『いえ、多分寝静まった頃合いを狙って居るのかと…。』

遼黄様は目を開けた。

「では、明日に備えて寝るか。」

「はい!」

二人は部屋に備え付けの風呂に入り、術で敵の動きを観ながら電気を消し布団へと入った。

…カタ

『遼黄様!来ます!』

「望む所…。」

ッキィィィン

敵の真剣と遼黄様の真剣が鍔迫り合いをはじめる。

尹穗殿も天井から降る敵二人に槍で食い止める。

「遼黄様!
この槍では部屋が狭すぎますゆえ、外に行きます!」

「わかった。」

尹穗殿は槍で敵二人を押し退けると窓から飛び下りた。

敵も続いて飛び降りた。

一階には既に先客がいた。

「珀郢殿!?」

「おお、尹穗殿か!
援軍助かった!
尹穗殿なら特殊術で…て。
何で敵さん連れてきちゃってんの!」

「そっちも二人か…。
倍だな。」

「何でそんな冷静なの?!」

「まだ他にも居てるはずだ。
兵が加勢に来るまで時間を稼ぐか…。」

「何言ってんの?
ここの兵皆眠らされてたよ?」

「何だと!!?
周角様…は烽琉殿が付いているから大丈夫だとは思うが、これ以上増えれば…。」

「ッ!…よっと、全滅しちゃうね。」

キィィン

「最悪掌国に援軍要請するしか…。」
「その前に取りあえず数だけでも減らしておいた方が良いね。」

「…だな。
…ふんっ!!」

グサッ…ザクッ

「ぐあッ!」

『…我は尹穗、闇の力を与えよ…』

尹穗殿の手が珀郢殿の敵二人に向けられ、黒い玉が大きくなり、やがて敵は玉の中にすっぽりはまった。


「珀郢殿、そこ巻き込まれる。
玉に触れても駄目だから。」

「うわぁ、早く言って頂戴よ…。」

敵は中からは出れず必死にもがいていた。

「中の空気が真空になる前に答えろ。」

敵は勢い良く頷いた。

「掌国からの報告で聞いたが、君達は崇と言う男に頼まれたのか?」

一人は黙ったが一人は頷く。

「その崇の組織には何人いるのだ。」

「…。」

「君達は知らないか。
ならいい。」

尹穗殿の腕からは紫のどす黒い炎が炎上し、囲まれていた黒い玉は縮小し、敵が消えた。

「…尹穗殿はいつ見ても凄いね。
一番敵に回したくないよ。」

「どうも。
それより遼黄様!」

「すっかり忘れてたわ。
俺に掴まって。」

「すまん。」

「しっかり遼黄様だけを考えててね。
異空間に堕ちたら戻ってこれないから。
いくよ!」

こうして二人は主の元へ移動した。

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