第三章


[13]生死


ー????ー

「これは赤龍を仲間にしたようだね。」

「はい!崇(スー)様。
掌国では龍緋(ロンヒ)と呼ばれているようです。」

「ふぅん、あっ、この情報流した者にこれを渡して置いて。」

崇とやらは兵の駒のような者にバッチを五つ程渡した。

「…こ…のバッチは!!」

「ん?なぁに、次の仕事だよ。
渡せば奴らなら解る。
掌国での仕事はとりあえず休止。
次は…。」

裏では何かが起きている、それに龍緋殿の過去に繋がる事に誰も知る由もなかった。

ー爽貴の部屋ー

「爽貴…。」

ベッドの上に誰かが座ったのに気が付いた。

「…ん?ここは…。」

爽貴様は目を開けたものの視野がはっきりとしないまま考えた。

(確か、昨日赤龍の契約が終って、龍緋が倒れ込んで…。)

はっと我に返ると布団を勢いよく体と共に跳ね上がった。

「龍緋っ!!ッッ!!」

覗き込んでいた龍緋殿の額に勢い良く爽貴様の額がゴツンと当たった。

「くッッ!!」

二人共声にならない位半泣きで額を抱えた。

「…ごめんなさい、龍緋。」

「…いや、俺も悪かった…。」

少しの間二人は額を摩っていた。

「…はぁ、マシになったわ。」

爽貴様は顔を上げると龍緋の姿がすぐ目の前に見えた。

全身包帯を巻いて、左片腕はギブスをはめ三角巾でぶら下げていた。

反対の腕は何も巻かれて居なかった。

「龍緋!大丈夫だったの?」

「ああ、幸い肋骨二本と左片腕の骨折、他は点々とヒビがいってる程度で済んだと聞いている。
璃燕からすればもっと骨折をしていたと思ってたらしいが。
この通りだ。
どうにか生き延びたみたいだな。」

「うん、…それとも死んだ方が良かった?」

「さぁ…。契約の間視界が真っ暗だった。目を開けると何かが暴走しそうだったのでな。
案の定体は軋む上に骨が木っ端みじんになりそうなくらい痛かったが、通り越したのか一瞬にして体が麻痺した。
もう死んだのかと思ったよ。
だが爽貴の声が聞こえた。
そして死んだら爽貴とは二度と一緒にいれない。」

「…うん。」

爽貴様は恥ずかしくなり顔が真っ赤になり俯いた。

それを見た龍緋殿は不器用ながら笑みを浮かべ爽貴様に優しく目線を合わせた。
「そして現に俺の前に爽貴がいる。
それだけで安心できる。
今は生きていてよかったと思っている。」

爽貴様はその言葉に何処かホッとしたような気がした。

「そっか。
私も龍緋が生きていてくれてよかった。」

龍緋殿は爽貴様の笑顔を見るとそっぽを向き手を首に置いた。

何処か照れ臭そうな表情をしていた。

龍緋殿が全快したのはその三日後だった。
皆はその回復の早さに驚いた。

魔術師長の彰廉先生、日く『龍と契約した者の回復力は尋常ではない。』と説明された。

そして包帯がとれた龍緋殿の全身には、背中に大きな赤い鱗の龍の横顔をはじめ、全身に龍の身体が巻き付いた様に描かれていた。

それが龍と契約をした証である。

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