オトウト


[01]敬輔


朝日が眩しくて、目を開けると敬輔が隣で眠っていた。
私達は裸だった。
「あのまま寝ちゃったんだ…」
起き上がろうとした瞬間、私の体が引き戻された。
「きゃあっ!」
敬輔は目を覚ましていた。
「おはよ」
「お、おはよう…」
私は気恥ずかしくてまともに敬輔の顔が見れなかった。
「今日、婆ちゃんの病院行くんだろ?支度できたら、送ってくよ。」
「うん。」

入院中のおばあちゃんを見舞う為に、ここに来た事を忘れていたわけじゃないけど…
敬輔ともう少し一緒に過ごしたかった。
「ねぇ、敬ちゃん。そういえば、陽ちゃんは?」
陽輔は敬輔の弟で、私の二つ下だ。
「あぁ、陽輔なら山篭り中。」
「山篭り?」
「陶芸家に弟子入りしたんだよ、アイツ。こっから近いけど、しばらく帰って来てないよ。」
敬輔の口調はどこか素っ気なかった。
「そうなんだ…」

敬輔にバイクで祖母の病院まで送ってもらい、敬輔は用事があるとかで、買物に行った。
祖母の病室に入ると、祖母のベッドの脇に、男の人がいた。
「こんにちは…」
「あらー、みちる!来てくれたの?嬉しいわぁ。」
「みちる…?」
「えっ?」
名前を呼んだその人をまじまじと見た。
「陽ちゃん!?」
陽輔が優しく笑った。

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