第五章


[01]仁国


ー仁国ー

仁国は掌国より遥かに小さい国で、戦力は四国の中では弱小国だが、商売などに関しては四国一鮮度が良いと評判で、特に武器屋を良く輸出している国だ。

国民は努力家の塊で、掌国や呂国にも滞在し、武器や盾を作っている者もいる。

その代わり弱小である仁国に掌国は優秀な兵を度々送り込み、兵力を他国並みに持ち続けていた。

ー仁国・王宮ー

王宮では王子の誕生日のため、皆がバタバタと走り回っていた。

ー王宮・周角の部屋ー

「周角(シュウカク)様。」

「なんだ、烽琉(ホウリュウ)か。
何?」

「何はないでしょう。
本日は周角様のお誕生日にございます。
そろそろご準備の方をお願いします。」

「…わかったよ。」

周角様は渋々と座っていた椅子を回した。
「今日は誰が来るの?」

「呂国の王子と鄭国の王子と後はご親戚の方々です。」

「ぇえ?爽貴は来ないの?!」

「何やら彰廉殿の修行があるので、また日を改めてと…。」

「…なら行かない。」

「!?」

「爽貴が来ないならつまらない…。」

周角様はふて腐れた。

「困ります!
行きますよ!」

烽琉は無理矢理、周角様の後ろ襟元を掴み、引きずって部屋を出た。

ー栄祝(エイシュク)の会場ー

ここは王宮隣にある広間で、四国一大きな祝祭会場である。

爽貴様も近々ここで誕生日の会が行われる。

既に会場は親戚と他国の知人、そして鄭国と呂国の両国王子が揃っていた。

「ねぇ見て!鄭国の盛策(セイサク)王子と呂国の遼黄(リョウコウ)王子よ!!」

「すごく美形よね!」

王子達と同年代のお嬢様方は整った面持ちと、身長に対し目立ってガッチリ過ぎない身体の王子に目を輝かせていた。

「遼黄殿、何か目線が怖くないですか?」
「さぁ、気のせいだろ。
それより爽貴様は来られないんだな。」

「そうみたいですね。」

盛策様と遼黄様は並んである料理を皿に盛っていると、会場中に司会者の声が響きわたる。

『お待たせ致しました。
今回の主役、周角王子が参られました。
先ずは王子から一言。』

「皆様、多忙な中お集まり頂きありがとうございます。

今宵、食事や踊りをご用意させて頂きます。

皆様、楽しんでいって下さい。」

『それではメニューの方をご説明致します…。』

周角様が下がると、遼黄様と盛策様の所へ移動した。

遼黄様は周角様の活気の無さに気付く。

「周角、どうした?
元気がないじゃないか。」

周角様の付き人、烽琉殿は答えた。

「それが、本日爽貴様が彰廉殿の修行中で、いつ終わるかがはっきりしないとの事で日を改めてお伺いしますと…。」

「そうか、周角は爽貴様が一番だからなぁ。
しかし彰廉殿と言うと四国一の魔術師、断りは出来まい。
せめて龍緋殿だけでもお出でになられたらよかったのだが…。」

そう行った途端、周角様の怖い顔をあげた。

「龍緋なんてどうでも良いよ!
爽貴じゃないと嫌だ!」

盛策様はなだめ始めた。

「まぁまぁ、私も爽貴様との再会は楽しみにしていたけど、もしかしたら来るかもしれないよ。
早く終わればの話だけど。
今日は周角様が主役なんだ、とにかく食べよう!」

「…わかったよ…。」

烽琉殿はやれやれといった苦笑を浮かべ、周角様はちょびちょびと並んでいる食事を皿に盛り始めた。

「遼黄様、盛策様、申し訳ございませんでした。」

「烽琉殿が謝ることなどない、まだ周角は私達より遥かに幼い。
気を許して八つ当たりや我が侭をするのは私達を信頼しての事、まだまだ可愛いではありませんか。」

遼黄様の言葉に烽琉殿は肩の力を抜いた。
「ありがとうございます。
今後共、宜しくお願いします。」

「あっ!彼が呼んでますよ!」

「はい、それでは失礼致します。」

烽琉殿は一礼をし去っていった。

その後、三人の王子にはあちこちのお嬢様方に躍りやお話を申し込まれていた。

ただ一人遼黄様だけは断りを入れ興味が無いように外へ出て、誕生日会も終わりを迎えていた。

遼黄様と盛策様は一晩仁国に泊まる事となった。

それが仁国にとっても危機をどうにか押さえれる事となる。

[次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.