第30章
[07]
ピジョン達の背を見送り、俺とミミロップ、ロゼリアは閉ざされたシャッターの前へと向かった。
「まったく、ロゼリアちゃんもムウマージちゃん達についていけばよかったのにー。私達に気をつかいなさいよね」
「え! そういうことだったんですか?」
「断じて違う。勝手な戯言だ。耳を傾けるだけ時間の無駄だぞ、ロゼリア」
「冗談です。わかっていますよ」
ちぇっ、と軽く舌打ちし、ミミロップは足元に転がっていたタイルの破片を蹴飛ばした。
くだらないやり取りから程なくして、前後のシャッターがぎちぎちと音を立て動き始める。
どうやら無事にスイッチを操作できたようだ。
ゆっくりとシャッターは駆動し、数十センチ程度にまで開いた時、右のシャッターの隙間から
何かの影が滑り出てきた。そして、運悪くその正面にいたミミロップへとその影は牙を剥き素早く飛び掛かる。
だが、俺が反応し電撃を放つ前に、襲撃者の牙は目標に到達することはなく、ミミロップの
健脚により蹴り飛ばされた。
その勢いのまま襲撃者は壁に叩きつけられ、鈍い音を立てて床へと落ちる。
「いきなり何、こいつ!」
襲撃者――毛色が全体的に少し白っぽいラッタ――はぴくりとも体を動かさずに地面に転がっている。
「やりすぎた……? 結構やばい場所に蹴りを入れちゃったかも……」
「……仕方あるまい、正当な防衛だ。確かペルシアンに貰った道具の中に元気の塊が――」
ラッタに駆け寄り、マントの左内ポケットを探ろうと体を捩った瞬間、俺の右頬に鋭い痛みが走った。
先程まで瀕死で倒れていたはずのラッタは立ち上がり、俺の頬を浅く裂いた前歯を
厭わしい笑い声のようにぎちぎちと擦り鳴らしていた。
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