第三章


[08]回想〔後編〕


あれから二年の月日が流れた。

その後も今日まで寝ることすら許されず、日田すら体力作りと術の習得、後の半年は掌国に関しての歴史等を叩き込まれたが、少年は段々と意見をするようになっていった。

「ふぅむ、掌国の姫に爽貴がなったとの事だ。
お前の一つ下だ。
爽貴は一度四国会議で会ったことがある。妃の春麗に瓜二つでとても美人だ。
ありゃあどの国からも手紙をもらってもおかしくないが、うつけと聞いている。
どうだ、ちょっとは興味を持ったか?
付き人は孫家の者が絶対だ。
孫家を畏れ誰も近づこうとはしないだろう。
だがお前だけは奴らを倒せる。
これから門番兵を倒し、王宮に向かえ。
その後王宮の中館入口には孫家がうじゃうじゃいるはずだ。
南館からの侵入が一番賢いかもな。」

「博士。」

「月(ユエ)か。」

「準備は整いました。」

「では少年に術をかけろ。」

流石の少年も初めて術をかけられる事をしった。

「まて、どういう事だ。
術をかけられる事は聞いていないぞ!」

「月、連れて行け。」

「はい。」

月は少年の腕を力強く掴み、博士とは違う方向に歩いて行った。

「おい、答えろ!」

博士はピタリと歩くのを止め、クルリと顔だけ少年に向け、一睨みした。

「『我々に関しては何も答えない』と始めに言ったはずだが?」

「っ!」

少年はただ孫家を潰すだけだと思っていたが、本当の目的とは王宮を攻め国王を倒すという指命を出したのは術をかけられた後だった。

少年は本当の目的を知り、博士には『術は君が裏切ったり、同情をしたり、逃げたり、我々に関する事を口にしたりすると術は作動してドーンと爆発だ。
勿論、任務遂行してもここに戻って来なかったりしても作動する。
そして君の行動は常に一部始終確認できるようにしている。
月、掌国近辺まで少年を見送ってきなさい。
くれぐれも見つからないように。
以上、健闘を祈る。』

そう言って研究所の玄関に入って行ったのだ。

二匹の馬だけが目の前に用意されていた。
「早く乗りなさい。
貴方に話さないといけない事があるわ。」
二人は馬に乗り走りはじめた。

途中、先頭に走っていた月の馬の速度が弱まった。

「君に話さないといけない事があるわ。
まず、私がかけた術だけどもちょっと知識のある術師だったら直ぐにとける。
だからやられるフリをするの。
毘禅に捕われたら春麗に術をといてもらいなさい。
貴方が負けた時点で術が弱まるようにしているの。
わかったわね。」

「それ言っても大丈夫なんですか?
俺、監視されてるんじゃないの?」

「私はあの場所でただ一人術を頼りにされているわ、私が帰らないと見れない。」

「…わかった。」

段々と掌国は近付いてきた。

国を出ると隣の国までが全て砂漠。

その中には木が一本掌国の近くにあり二人は身を潜めた。

遠くの方で入口が見える。

「あそこから入るのよ。
私はこれ以上行くと帰りが遅くなってしまう…ここまでよ。」

「ありがとう。」

それだけ言い放ちただ一人掌国へと乗り込んで行った。

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