第三章
[07]回想〔中編〕
それから一睡もせず三日三晩、頭脳・身体の検査と瞬発力・体力・速さの測定が終わったが、少年は平然としていた。
近くの壁にもたれ掛かり座っていると、女の助手のような人が何枚もの紙を持って走ってきた。
「T博士!
結果が出ましたが大変です!」
博士は彼女の持っていた紙全てを渡した。
「何?!」
博士は一枚の紙を見るなり表情が変わり次から次へとめくって行く。
「…実験所かコイツ一人で既に条件は揃った!」
「博士、それでは!」
「孫家をも遥かに上回っている!
直ぐにでも計画を開始しても良いぐらいだ。
昔から赤目は縁起が悪いと聞くが、天は我々に味方をされたのだ!
だが気を抜いてはいかん!
測定は終だ。
姜(キョウ)、月(ユエ)を呼んできなさい。
君はこれと一緒に第一実験室へ行き次の計画に足りないものを考えておけ。
我々も直ぐに向かう。」
「はい!解りました!」
姜は少年の手を取り歩き始めた。
部屋を出て右角を曲がろうとした時、黒衣を着た女性で真っ直ぐな毛をなびかせた人に寸出の所でピタリと止まった。
「あー、ビックリしたぁ。」
「ユ…月さん!
今日もお美しいですね!」
「あら、嬉しい。」
「あっ!丁度良かった。
博士が呼んでましたよ。」
「わかったわ、ありがとう。」
「では私は第一研究所に用がありますので失礼します。」
「はぁい。」
姜は頭を下げ月の隣を通り過ぎて行ったが、月は少年の姿を見過ごさなかった。
「赤目…。」
月は考えながら博士の部屋へと向かって行った。
「…博士、失礼します。」
「おお、早かったなぁ。」
「はい、博士に丁度用がありまして、向かい途中に姜と会いました。
お話とは?」
「ああ、実はな…。」
「あの赤目でしょうか?
まさか彼が計画の…。」
「はは!
本当にお前は私の先を読むな。
そう、そのまさかだよ。
この検査結果を見てくれ。」
博士は姜の持って来た検査結果をみせた。
「…まさか!!
あの子まだ小さいのですよ!?
秀才な大人や掌の孫家ですらこんな結果出ない!!
言えばほぼ怪物に近いわ。」
「ああ、そのまさかだ。」
「それでは計画は続行処か、決行できます。」
「この計画を真っ当に遂行できるのは彼しかいない。
だが今回の検査でわかった事は赤目はこの研究所において今後必要不可欠な存在だということだ。
彼の構造、測定は正に興味深い。
そこでだ、君の旧黒魔術で遂行後ここへ戻って来れるよう何十も術をかけて欲しい。そしてもし捕まるような事があれば、我々の事を話せないよう、話しをすると爆発するよう仕掛けて欲しい。
後は捕まったとしても死刑だ。
それは掌に任せよう。」
「解りました。
ですが、これだけ心・技が断トツだとかけた術は彼にバレるかと…。」
「構わん!
まだ奴は三歳、実際おかれている状況すらわかっていないだろう。
そのうちに術をかけろ。」
「わかりました。」
「とこで君も何か私に話があったのでわ?」
「はい、赤目にかける術を完成させました。」
「そうか、ハハハ、今日はいい日だ。
月、楽しみにしているぞ。」
「はい、お任せ下さい。」
月は部屋を出て廊下で立ち止まり、目つきが変わり笑っていたことは誰も知る由もなかった。
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