第四章


[06]判明


龍緋殿は『月(ユエ)』『K』『T博士』の名前を出した途端顔面蒼白となった。

「…厄介な事になったのぉ…。
『T博士』と言う者以外は書類を見んでも知っておる。」

爽貴様は続けた。

「月はお母様のお姉様と聞いています。
『K』はやはり掌国の…。」

「あぁ、『K』とは『槹絽(コウリョ)』の事だろう。
幼い頃周りからよく『K』と言われてからかわれておった、ワシの教え子じゃ。
だが奴はある日、瑞獣(ずいじゅう)『鳳凰』を狙い始めた。
瑞獣は『鳳凰』『麒麟』『霊亀(れいき)』『応竜(おうりゅう)』とある。
その四獣の主になれば計り知れない力を発揮する。
その力を手に入れたいんだろう。」

爽貴様は思い出したかの様に話はじめた。

「瑞獣…確か授業で聞いた事があるわ。
確か四神より強いとか。」

「爽貴様の話が事実であれば俺の中にいる『赤龍』でも敵わないのですね…。」

「いや、そうとも限らん。
瑞獣と四神では各属性がある。
四神では赤龍の『火』、白龍の『風』青龍の『水』黒龍の『土』
火は水に弱いのに対し、土には強い。
瑞獣の場合は炎の『応龍』、嵐の『鳳凰』、海の『霊亀』岩の『麒麟』と四神よりかは強い属性となる。
その中で黒龍は必ずしもこちらのモノにしておかなくてはならない。
何故なら…。」

彰廉先生が言いかけた所に龍緋殿が割ってはいった。

「黒龍は海に生存しているから…。」

爽貴様は疑問を投げかけた。

「土の属性なのに?」

「そうだ、この間の授業で新月についてわしは話しておったであろう。
あの時関与が急遽という事で授業は中断したが、新月の夜の海に黒龍は現れる。
土属性で水に少し弱いが、新月の夜は特別海には強い。
とすると、新月の夜だけ霊亀と同じ属性を持てると言う事だ。」

「なるほど、ではこちらが四神の主になれば早い話しなのですね。」

「そうだ、しかし白龍は必ず存在はしているのだが、掌国初代国王が主になっていた事があったが、彼が亡くなって以来白龍の姿は誰一人見たことがないんじゃ。

「私には神呼の笛がありますのでご心配はないのでは?」

「それが龍緋殿の手に神呼の笛を吹いておったモノがいるが、なぜか奴は現れなかった。」

二人は彰廉先生の言葉に活気が薄れていった。

「そう気を落とすな、取り敢えずあと二神だけでも手にいれる事じゃな。
わしはそろそろ講義があるから失礼するよ。
行方不明者の書類は好きにみてくれても構わんが、これ以上はごった返さないでくれよ。
わしも歳じゃからな。」

彰廉先生は笑いながら部屋を出た。

取り敢えず、二人で最近の書類に目を通したがわからず、少し話しをし、彰廉先生の書斎を後にした。

空になった書斎は窓からは少し湿気た風が吹き、彰廉先生の机にある書類の一冊が勢い良くめくられていく。

ぴたりと開かれたページには『垰珎(タオチン)』という行方不明者の顔写真と生年月日、そして捜索日は三十年前の日付だった。

そしてまた悪戯によりページがめくられていき、書類は閉じられていった。

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