第四章


[03]建物


ー渡り廊下ー

南館から北館各階も通して出来ている廊下がある。

皆が移動し南館から中館に移った時、関与の後に歩いている毘禅様に呼ばれ、爽貴様は各国の王と王子の所へ行った。

前へ行ったのを確認すると誰かが声をかけてきた。

「やあ。」

龍緋が振り向くと先程声をかけてきた仁国の付き人だった。

「…なんだ。」

龍緋は射ぬくような鋭い目つきで答えた。
「そんな睨むな。
俺とお前の仲ではないか。」

「お前とは今日会うのが初めてだ。」

「果たしてそうかな?」

「どういう…」

龍緋が言いかけた所に毘禅様は遮った。

「こちらがわたしの書斎です、どうぞ中へ。」

男は微笑み龍緋に促す。

「入ろう。」

「…。」

渋々龍緋は部屋へ入った。

「あちらをご覧下さい。」

皆が外を観るが、特に普通の景色だった。
「では皆様、後ろを向いて下さい。」

皆が後ろを向き、毘禅様は窓で頭を出すと真下には春麗様がたっている。

「頼む!」

春麗様が頷いた。

「さぁ、こちらを向いて頂いて結構です。」

そして皆が振り向くと、日が当たっていた所は影になっていた。

「何と!!」

外には窓スレスレの位置に塔のような物が出来ていた。

「毘禅殿!どういう事か?この塔は仁国にある塔と同じ…どうやって移動させたのだ?!」

「実は、私も今日初めて観ました。
これは移動させた物でなく、写した物だ。」

「何と!?幻覚か?」

「いえ、現物です。
触れますし実際に中も入れます。」

皆が絶句した。

「そして、作ったのは春麗と数人だけです。」

呂国の国王が口を開いた。

「どのようにして…。」

「すべて『古代禁術』です。」

皆が初めて耳にした言葉に沈黙が漂った。
始めに沈黙を破ったのは仁国国王だった。

「…まぁ、掌国の『術』は他の三国に比べれば勝っている、『古代禁術』とやらがあっても不思議ではないな。
だが禁術って訳だと、『術』を使える人でも簡単に習得できまい、誰か心当たりはあるのかな?」

毘禅様はため息をつき龍緋に目をやり答えた。

「はい、ご存知の方もおられるはずですが、春麗の姉『月(ユエ)』です。」

『何っ!?』
仁国国王は真っ青になって口にした。

「あの月殿が…」

呂国国王が首を傾けた。

「何物だ?月殿とは?」

毘禅様は呂国国王に目をやった。

「はい、春麗と私が結婚直後、春麗と月の両親が亡くなられた直後に行方不明となったんですが、ここ最近急に月殿の情報が入りまして…。」

呂国国王は眉を潜めた。

「この事、春麗殿は…?」

「恐らくこの塔を創らせた時点でわかったかと…。」

「お母様…。」

落ち込む爽貴様に龍緋は拳を力一杯握りしめ、ただただ爽貴様の後ろ姿を見ていた。
「あの意味不明な城、そして各国の災いの解決策を進めるためにも早速春麗に色々話をしてみようと思っています。」

毘禅様は眉を潜めた。

それを察した鄭国国王は口をはさんだ。

「…そうだな、春麗殿には酷な話、だが、余り急がれるな。
城はともかく、ワシらの国の事は兵を強化すれば良い事、民にも強く注意をするように促せば多少は防げる。
兵が足りなければ他国が協力すれば防げる、今までそうしてきたではないか。
だから余り気負いをしなさんな。」

鄭国国王は笑顔を向けると呂国国王も豪快な笑顔を向けた。

「そうさね、毘禅殿が倒れてしまっては爽貴殿の笑顔が見れなくなるではないかぁ、せっかくの美人が台なしになるよ…のぉ?」

皆が力強く頷くなか爽貴様は真っ赤になり顔を伏せた。

「クスっ…。」

爽貴様は後ろの龍緋殿の笑いがご自分に向けられたのを感じ、周りに解らないよう勢いよく拳を後ろにやった。

(わ…笑わないでよぉ!)

龍緋殿のお腹に殴りを入れたスンデの所、上手く掌で防がれた。

(ククッ、ごめん。)

毘禅様はその後、少しお話をし、会議を終えた。


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