第二章


[03]再会


璃燕はこれの牢屋の中の様子がおかしいと感づき兵を呼びにいった。

少しの間沈黙が続き先に口を開いたのはこれだった。

「…爽貴…会いたかった。

とても嗄れたと言う限度を越えている。
絞り出してでている声が精一杯であろう。喉下からは息をするたび「ヒュー、ヒュー」と音がする。

「無理してださないで。
血が出てるんでしょ?」

「あぁ…だが爽貴に会えないならば眼、鼻、口、喉をくれてやるのはやすい事。
今回で本物でなければ舌をかみ砕く覚悟さえしていた…ケホ…うっ…ゴホッ!」

「…ッ!大丈夫?」

爽貴は初めて牢屋の中に入った。
彼は手を後ろに鎖で繋がれている。
手首には鎖が擦れた跡だろう、まだ血が滲んでいる。
腰まである髪が咳と共に揺れる。

爽貴様は一生懸命背中を摩った。

「…綺麗な服に血が着くぞッ…ハァ。」

「…貴方の名前本当にないの?」

「…無いな…。
産まて直ぐにテロリストとして鍛え育てあげられた。
産みの親ではなくテロを目的とした研究者に…ケホッ。」

丁度咳をした頃、璃燕先生は国王・毘禅様を連れてやって来た。

爽貴様は何度も牢獄に近付き毘禅様に怒られるといったことがよくあった。

今回も叱られる覚悟は出来ていたが予想外な出来事だった。
毘禅様は爽貴様を見ては申し訳ない顔で歩いてくる。
爽貴様は下を向き怒鳴られる覚悟で謝った。

「お父様…ごめんなさい!」

直ぐに毘禅様は口を開けた。

「…爽貴…悪かった。」

滅多に頭を下げない父親が謝ったのにビックリして顔をあげた。

「五年前これが爽貴の部屋に戻った時は正直生きた心地がしなかった。
一人娘を連れていかれたかと思った。
だがこれを隔離していたのはそんな理由だけではないのだ。
隔離していた事について今日の四国会談で話をしようかと思ってたのだ。
だがもういい。
璃燕からこれの話と状態を聞いた。
とりあえず直ぐさま部屋を用意し、治療に勤めよう。
治り次第、詳しく話を聞こう。
爽貴の隣の部屋は空いていたな?」

話の展開が早過ぎたが爽貴様はパッと笑顔になり、これと近くにいられる事に大層喜ばれた。

「はい!私の隣の部屋は空いています!
ありがとうございます。」

毘禅はその笑顔につられふっと優しく囁いた。
璃燕先生もにこやかになり疑問を一つ切り出した。

「しかし先に彼の名前を決めない事には、掌国の宮中に名無しがいると世界的に悪くみられます。」

その言葉に毘禅様は大きな腕を胸元で組み眉をひそめ唸る。

「う〜む…考えておこう。」

毘禅様は着いてきた兵に向き直った。

「こら何をぼさっとしている!
彼の鎖をとならいか!」

「は…はいっ!」

急いでポケットにある鍵を出し鎖を解いた。

続いて眉を険しくし、同じ兵に指示を出した。

「彼に風呂と部屋を用意!
彫雲(彫雲)には、今晩会議室で緊急会議を始める。
孫一族を収集しておけと伝えよ!
私は部屋に戻るが何かあれば直ぐに報告せよ。」

「はいッ!」

毘禅は眉を戻し優しい父親の顔に戻った。
「爽貴、後は頼んだぞ。」

毘禅様は牢屋を背に向け出口の方へと歩いて行った。


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