第四章


[17]破壊

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黒龍は爽貴様の近くまで顔を寄せた。

『良シ、デハ行クゾ。』

(確か前もここで気を失ったんだわ。
今度こそ…。)

黒龍が息を思いきり吸い込んだ。

グゴオオ…ガッ…

目を瞑って待っていたが黒龍の雄叫びが途中で止み、様子が可笑しい事に気付いた。
グガ…ガガ…

何処か黒龍は何かにもがいているようにも見えた。

『モシヤ貴様ハ!』

「え?」

黒龍のお腹の中に何かが暴れているようにも見える。

『ヤ…ヤメロ!ヤメロ!』

「えっ?何?」

うがああぁぁぁぁ…

黒龍の叫びと共に何か白い物が腹を突き破り真っ直ぐ空へと消えた。

それは早過ぎて何かは定かではなかったが黒龍は気付いていた。

『アノ小僧メェェ…フフ…ハハハハハ。
何処ニモ居ナイト噂ハ耳ニシテイタガ、マサカ貴様トナ…。
奴ハ我ニトッテモ最大ノ弱点、我ノ世界デ暴レラレテハ我ガ身ガ持ヌ。
我ハ爽貴ト契約シヨウ、何時デモ呼ビ寄セルガヨイ。』

白い物が飛んでいった先からは白い花びらが無数に散らばり始め、爽貴様の視界は白い世界へと変わっていく。

気が付くとさっきとは真逆な真っ白な世界が広がっていた。

そして黒龍とは違い、落ち着いた声が聞こえてきた。

『爽貴、久シブリダナ。
黒龍トノ契約オメデトウ。』

姿は見せないが脳裏に直接声が聞こえてくる。

「貴方は誰?」

『君ノ味方ダヨ。
マダ姿ヲ見セル時機デハナイ。
デモ必ズ近クデ君ヲ守リ、恩返シヲスルヨ。
マタネ…。』

(…恩返し?)

白い世界が崩れ現実へと引き戻された。

「そ…き…。」

(また誰かが呼んでる?)

「爽貴!」

「はっ…!」

意識がハッキリした時、目の前に焦りを隠せない毘禅様の顔がハッキリと移った。

「お…お父…。」

毘禅様の顔が、黒龍の世界で起こった出来事が一瞬浮かび上がった。

「…お父様…御免なさい…」

「…何故謝る?」

「…え?」

「しかし今日は大変だった。
関与は彫雲との修行中にいきなり倒れるわ、薪宮と垰珎と他の囚人達も倒れるわで。さっき薪宮達がが意識を取り戻し報告にきた。

爽貴は頑張っていたときいた。

さぞ彰廉殿も喜んでいる事だろう。」

「後で報告に行くわ!
それより龍緋は?」

「奴は牢屋に行ったよ、五年前、牢獄暮らしの中世話になった奴がいるとか何とか…。」

「王(ワン)さんだわ!」

「ああ、あいつか。
物凄く年下が好きで、かなりの世話焼にな
ってるそうだな。」

爽貴様は一目散に部屋を出た。

「爽貴!…ったく、私も久しぶりに顔を出すか。」


ー牢獄ー

爽貴様が牢獄へ着いた頃、龍緋殿が冊ごしに王殿と会話をしていた。

「王さん大丈夫ですか?」

「ああ、お前が来る前から目覚めていたよ。
龍緋か…、立派な名前を頂いたじゃないか!」

龍緋殿は照れながら頭をかいた。

「国王には感謝しています。」

「そうか…それに赤龍とも契約を結んでいたのか。」

「はい、意外と契約できるものでした。
中ではたまに狭いと文句を言われますがね。」
「そうか、だが無理をするな。
お前はあの姫さんの事となると必死だからな。」

「ハハ、王さんは大袈裟です。
大丈夫、俺はそこまでヤワじゃないですよ。」

「そうか、わかった。
それといつでもここにおいで、垰珎の子守ばかりではつまらんからな。」

垰珎はギロっと王を睨む。

「ンだとぉ?!」

「賑やかで良いじゃないですか。」

爽貴様は切りの良い所を狙い会話へ入って来た。

「龍緋に王さん!」

爽貴様の声に近くにいる囚人達は黄色い声で迎え入れた。

「姫さん!おめでとう!よくやったな!」

「俺、出所したら国兵になるよ。
っで、戦闘時は姫さんに着く!」

「お前俺の言葉取るなよ!」

「皆…、申し遅れました爽貴です。
先程はありがとうございました。」

爽貴様は改まって頭を下げた。

「そんな改まんなって、いつでも呼んでくれや!
俺たちゃ〜外界の野蛮達より強ぇからよ。」

「堅い事言わず楽に行こうぜ!」

「ふふ、ありがとう!」

龍緋と囚人の皆に優しく包まれる爽貴様を毘禅様は影で見守っていた。

「ふん、出る幕などなし…か。」

ー????ー
垰珎は敗れ、崇は上層部より圧力をかけられていた。

「クソッ!
龍緋さえ倒せば後は俺だけで掌国は潰れるはずが…。

しょうがない、次は仁国を狙おう。」

こうして崇は着実と兵を仁国へ向かわせるのだった。

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