第四章
[15]逆転
ピンクな花びらがヒラヒラと沢山目の前に落ちてくる…。
その奥で誰かが呼んでいる…けど花びらで誰が立っているのか定かでない…。
「お…そ…。」
(今…何て?)
「おい!爽貴!」
ハッキリ言葉を確認出来たとき、爽貴様は我に還った。
「はっ!」
ガバッと勢い良く体を起こした時だった。
ゴッッ!!
「…。」
誰かと頭をぶつけた。
爽貴様は頭を抱えながら相手を伺った。
「す…すいません。」
相手も頭を抱えながら落ち着きスッと頭を上げた。
「いや、俺も悪い。」
「ぷっあはは」
いきなり爽貴様は笑い始めた。
「どうした、頭を打ったか?」
「ううん、覚えてない?
この前もこんなことがあったわ!」
「ふっ、そうだったか?」
龍緋殿は照れ臭く笑っていた。
「もう大丈夫そうだな。」
「ええ、何処も痛くも痒くもないわ!」
「そうか、あっ、彰廉先生が目が覚めたらくるようにと言っていた、何か険しい顔をしていたな、何かしたのか?」
ー別館五階・魔術士長の書斎ー
コンコンコンコン
「爽貴殿か?」
ガチャ
珍しく向こう側からドアが開いた。
そこに立っていたのは関与殿だった。
「あっ関与!」
だがいつもの関与殿とは違い真っ暗な瞳が爽貴様自身に突き刺さる。
「早くはいれ。」
関与殿が冷たく中へ促す。
爽貴様が渋々中に目をやると毘禅様と彫雲殿がこちらを向いた。
中央の何時もの机には彰廉先生が机に両肘をつき指を組んでいた。
「爽貴殿、黒龍との契約はできなかったようじゃな。
何故意識を無くした。」
彰廉先生の冷たく無表情な眼差しに爽貴様は身動きができなくなっていた。
毘禅様は苦笑しながら振り向いた。
「爽貴、お前は私の顔に泥を塗るつもりか。
勉強は出来ん、ろくに黒龍との契約も出来ずただ浜辺で意識を無くしていた。
今まで甘く育てすぎたな。」
「そんな…。」
弱った爽貴様がやっと絞り出た言葉を彰廉先生はさえぎった。
「問答無用!
もっと自身を我慢強くなされ。
忍耐力もなさすぎる!」
彫雲殿は何か閃いたように豪快な笑顔を作った。
「いい案を思いつきました!
ここにいる四人対爽貴殿で戦うのはどうです?
兵もきちんとそろえましょう!」
「それは良い、戦闘を身につけるいい機会だ。
兵は爽貴、自分で揃えなさい。
では二日後に修行場で行う。」
「…わかりました。
兵を揃えておきます。」
爽貴様は俯き拳には震えが止まらなかった。
「では行って良い。」
「失礼しました。」
爽貴様は一礼すると部屋をでた。
パタン…
「はぁ…。」
「そうゆう事だったのか。」
「わぁ!龍緋!脅かさないでよ。」
「っで、どうするんだ?
兵を集めるにしても既にあちら様についているはず、何処を当たっても断られると思うが。
何故急にこんなことになったんだ。」
真剣な龍緋殿に対し爽貴様は肩を震わし俯いていた。
「…まぁ、そう落ち込むな。」
「あはははは。」
いきなり笑い始めた爽貴様に龍緋殿は言葉を失った。
「龍緋わかったわ!
私の部屋に来て!」
ー爽貴様の部屋ー
「私、黒龍の契約は失敗していないわ!
今現時点が契約の初期段階なのよ!
おかしいと思ったんわ。
お父様が叱る時は必ず一対一で話をするし、国内では例え練習だとしても戦闘実践をするのは掟やぶりなの。
必ず策を立てる時は地図上に駒を用いて練るもの!」
「なるほど、っということは彫雲が言い出した明後日の戦闘に勝てば…。」
「契約成立って事よ。」
「…そうか。
俺はあっち側には入っていない、爽貴に手をかそう。」
「実は誘うつもりだったの。
後は兵をどうにか…。」
「兵は俺が段取りしよう、強い奴を一人とあるところから一人知ってる奴がいる。
耳を貸してみろ。」
龍緋殿は爽貴様にコソコソっと話をしはじめた。
「それならそこらの兵より心強いかもしれないわ!
早速向かいましょう!」
こうして二人はコソコソと王宮内を行き来しては策を立て、次の日の夕刻までに人員は集まった。
兵に呼ばれた者には体力作りをしはじめて貰っていた。
「これって敵より強いかもしれないわ!
「当たり前だ。
俺が昔世話になった奴ばかりだ、迷惑もかけたが、協力してくれて良かった。」
「後は明日、あの四人を黙らせてやるんだから。」
ー国王書斎室ー
毘禅様の部屋は闇に飲まれたかの様な薄暗くなっていた。
当の本人は椅子に座って、扉横に立つ関与殿に声をかけた。
「関与、爽貴の奴はどうなった?
龍緋はまぁ着いているだろう。」
「はい、ですが二人で王宮内をバタバタと走っているだけで、進んでいるのか否かは定かではありません。」
「どうせまだ兵を見つけられず右往左往しているのだろぅ。
兵は全てこちら側についついるからなぁ。
ー国王書斎室ー
毘禅様の部屋は闇に飲まれたかの様な薄暗くなっていた。
明日が楽しみだ。」
「はい。
毘禅様、明日に備えお早い目に切り上げて下さい。」
「あぁ、そろそろ出る。」
「それでは失礼致します。」
関与殿は先に部屋を出た。
こうしてお互い一日が過ぎていった。
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