第四章


[13]昇格


龍緋殿・薪宮は毘禅様を連れ、垰珎のいる部屋へ向かっていた。

龍緋殿は毘禅様に報告を終えた。

「話はわかった。
薪宮、助かった、仕事が溜まっていた、言い訳に過ぎないがなかなか目を配れなかった。
今後も宜しくたのむ。」

「はっ!」

部屋が近づき薪宮は先回りをし、ドアを開けようと龍緋殿を少し追い越した時だった。

龍緋殿は薪宮の勢いを制した。

「…!。」

薪宮はドアの前に黒い人影があるのに気づく。
毘禅様も気付いていたのか、足を止めた。
「…あれは呪術(ジュジュツ)だな。
既に敵には捕まった垰珎の居場所がわかったのか。
奴を抹殺しにきたのだな。
奴は『呪いの死神』と言われ、触れると即死と言われている。
出来れば彰廉殿が術には詳しいが、今は爽貴と浜辺へ行っているはず…。
春麗か理燕でも呼んでこよう。」

薪宮は余裕な笑みを浮かべた。

「お待ち下さい毘禅様、ここは私めにお任せ下さい。」

「何とかできるか?
ならば任せよう。」

「はい!」

薪宮は指を伸ばし前斜めに手を振った。

「解っ!!」

影の体の中から何かが繁殖しているのか、お腹辺りになるのかブクブクと太っていった。

グ…グガアァァァッ!

薪宮は不適な笑みを浮かべている。

太っていった黒い体はやがてパンパンになった。

グハァァァ…

口からは何かが出された様だが、影になってたためにハッキリとはしない。

「これで終わりにしましょう。」

薪宮はパンッと両手を叩き、左手を前に出した。

手には小さな玉を握るように指が曲げられていた。

掌を完全に結んだとき、影はあちこちに黒いものが飛び散った。

バシャァァ!!

飛び散った影は段々とこちらへ向かってきた。

「毘禅様、龍緋殿、少し下がってて下さい。」

薪宮はそういうと、薪宮の影が動き出した。

手にある部分の影が向かっている影をとらえると、口の部分にほうり投げた。

ボキッ…バキッ…グチャ…ゴクン…。

「これで大丈夫ですよ。
私の影が飲み込みましたから後は消化を待つのみです。」

「なるほど…目には目を、闇には闇をか…。
薪宮の術は何時も驚かされる。
二度も助けられたな。」

「いえ、まだまだ未熟です。」

「…面白い、明日から王宮で働いてみないか?
君みたいな優秀な策と技術が在れば掌国の戦力になると思うが。」

薪宮は片膝を床に付け頭を下げた。

「ありがたきお言葉にございます。」


「宜しくたのむぞ。」

「はい!」

薪宮は扉の取っ手に手をやり、毘禅様と龍緋殿は部屋へと入っていった。

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