第四章
[12]捕縛
「ねぇ、垰珎、オバチャンの所おいでよぉ。
安くするわよ。」
(…やめろ…)
「私の所は?」
段々と暗闇の中、オバチャンばかりが増えていく…。
「やめろぉぉぉ!!…はっ!!」
垰珎はオバチャンの悪夢まで見ていた。
「…あっ起きましたね!」
「本当だ。
死んでればよかったのに。」
「お前ら誰だ?」
「お前こそ誰なんだ!」
「よしなさい、龍緋、一応お客さんですよ。」
「ふん、招かざる客め。」
「まぁまぁ。
申し遅れました、私、薪宮と言います。
こちらは龍緋。」
「あああぁぁぁ!!
オバチャンですっかり忘れてた!!
お前をギャフンと言わせにきたんだ!
覚悟しろ…あれ?」
両手・足には鎖でぐるぐるにされていた。
「くっそぉぉぉ!!」
龍緋は同情を飼う様な笑みを浮かべた。
「俺に何を言わせたいんだ?ん?」
「くぅぅっそぉぉぉ!!」
「龍緋、その辺にしておきなさい。」
「くくっ。
すいません。
薪宮さんの策にここまで追いやられるとは…ぷっ…くく。」
「策?」
「はい、民に怪しい者を見つけ次第群がり時間稼ぎするようにと私から策を計七ヶ所設定していました。」
「あれを突破していても後6ヶ所に同じ事があったと思うと…」
垰珎は真っ青になった。
「しかし、敵さんなら剣を抜くか術を使うかと思っていたんで、彼女達には隠しナイフや呪符を渡していたんですが、良くがま…ぶっ…くくく…我慢…しまし…ぶっ…失礼…くくく…。」
薪宮は必死に笑いを堪えた。
「お前ら本当に失礼な奴らだなぁ!!」
「ちょっと、毘禅様をお呼び…くくくっ…は…話ができない…ふふふ…。」
「…くくくっ、薪宮さん笑いすぎですよ…ぷふっ…。
お前は大人しく待っておけ!
暴れてもこの部屋で術は使えない。」
「くそ、馬鹿にしやがって。」
「じゃ、また後で。
いつまで…笑ってるんで…っすか。」
「…じゃぁね。」
パタン
垰珎は赤裸々となっていた。
(アイツ等馬鹿にしやがって!
しかし崇様怒ってるだろぅなぁ…)
廊下から微かに声が聞こえてきた。
「…もうだめ…。」
「…俺もです…。」
(あいつらまだ居たのか…。)
その瞬間、ドッと二人の大きな笑い声が廊下に響いていた。
垰珎は恥ずかしさを通りすぎ、怒りながら半泣きをしていた。
「はよぅ行けぇぇ!」
薪宮は龍緋殿を連れて王室を訪ねて行った。
「ハァ、久しぶりにあんだけ笑いました。
彼には感謝ですね。」
「薪宮さんは何時もにこやかじゃないですか。
そぅいえば、笑いの余り奴の名前を聞いて無かったですね。」
「何いってるんですか?
彼は垰珎さんですよ。」
「何故知っているんですか?」
「彼は呂国出身の少し名の知れた術者なんですが、いつやら行方不明になっていたと聞いたことがあります。」
龍緋殿の頭には何かがつながっていた。
「彼は単純ですが、敵に回すと少し厄介かもしれません。」
「あれがですか…。
しかし、何故皆が行方不明になって行くのでしょうか?」
「それは彼に聞いたら解るでしょう。」
「…そうですね。」
二人は王宮に入り王室へと階段を歩み始めた。
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