第四章
[10]鍛錬
ー鍛錬の間ー
この部屋は他の部屋とは違い、空気が薄めになっている。
その中、毘禅様と龍緋殿が龍を呼び出す修行をしていた。
「今からは龍を呼び出す修行だ。
もちろん、『龍呼(りゅうこ)の笛』なしでだ。」
関与殿も爽貴様もいないとなれば彼は毘禅様に対してでも私語だった。
「俺は龍を呼ぶのは笛以外は知らないが?」
「だろうと思って『古(いにしえ)・四神の書』を持ってきた。
勿論、彰廉殿からだ。
ここに君が契約を交わした『赤龍』を呼び寄せる文が書いてある。」
書物が龍緋殿へと渡った時だった。
書物は宙に浮き、自然と紙が次々とめくれていく。
その現象に毘禅様が一番驚かれていました。
ピタッと止まった頁には古代文字が書かれていて、実際には何と書かれているかわからないが、龍緋殿の目には文字が眼球に焼き付いていた。
『我は主(あるじ)たる龍緋、古より四神・赤龍よ現れん…』
すると龍緋殿の足下の床には丸く赤い龍の印が半径1メートルに描かれていく。
そして体に赤く掘り起こされた龍が浮き出てきた。
そして龍緋殿を渦巻く様に頭が天井ギリギリまで伸びていた。
『我ヲ呼ビシ者、龍緋、マタ貴様カ…用ハナンダ…』
その答えに毘禅様が答える。
「赤龍、貴方の威力を観てみたいのだが。」
『ホゥ、掌の五代目カ、良イダロウ。
一吹キデ終ラソウ。』
赤龍は大きな口から勢い良く辺りの空気を吸い付くし始めた。
ゴオオオオオ
二人は暴風のなか必死に飲まれまいと地に足をつけた。
「龍緋飲まれるな!」
「国王こそ…」
オオオォォォ…
暴風は止まった。
「吐くぞ!!」
毘禅様の言葉を合図に赤龍の口からは一気に炎の渦が巻く。
ドゴオオオォォォ!!
「…。」
「これでもまだ全てを吐ききれていない、この部屋は地上よりも半分程酸素が少ない、四神や瑞獣は真空には少し弱い、だから地上ではこの二倍になるだろう。」
「そうか…」
「じゃあ今日は終わり。
これはかなりの体力と神経がすり減るからね。
取り敢えず『出せる』、そして奴を『使う』様にすれば後は奴が勝手に動きやがるだろぅ。
後は休め。」
毘禅様は龍緋殿の前に立たれた。
「俺ならまだやれるけど??」
「…まぁ、そう強がるな…。」
トンッ…ドサッ!
毘禅様の人差し指が龍緋殿の額に当てると同時に後ろへと倒れ仰向けになった。
毘禅様は豪快な笑みを浮かべた。
「ハハハ!
それが何より疲れの証拠だ。
何、慣れれば一日中出していられるようになる。
今はまだ初段階、こうして使えた事だけでも良しと思え。
また明日、ここへ来なさい。」
そう言い残し部屋をさって行った。
「…くそっ…」
『…オイ童、ドウスル、モウイラナイノナラバ我ハ戻ルガ?』
「…。」
『…一ツ話ヲシテヤッテモ良イ。
白龍ハ確カニ存在スル。
シカシ奴ハ既ニ主ヲ持ッテシテイル。
ソノ主ハコノ城ニイル…ガ、白龍ハ潜ンデイルダケデ、主ハ気ガ着テハイナイ。
ソレダケダ。
我ハ戻ル、デハナ。』
シュウウゥゥゥ
赤龍は龍緋殿に戻った。
「…白龍を調べるか…。」
龍緋殿は立ち上がり部屋を後にした。
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