第三章


[01]報告


毘禅様は再び緋色の椅子に座り足をくむ。
「…っで、どうだったのだ?」

真っ赤な絨毯に片膝をつけて話を続けた。

「はっ!
呂国の直ぐ東の方角に何者かが城を建てているご様子。
呂国の民の話によると、一晩で出来上がったとか…。」

「な、一晩だと!?」

「はい。
通常、あの位の城だと人を使って八年余り、術を使って五年という所を一晩でです。しかも周りには見つからないようにしているのです。

呂国(ろこく)の門番兵が朝交代しにきた時に気付いたそうです。」

「僑(キョウ)一族は何をやっているのだ!」

「あちらの王宮付近の民情報では、怖くなった民が王宮の兵に聞いたところ、情報が全くないので無闇に手だし出来ないと言われたそうです。」

「そうか…。
だが城という程大きな物が建つとなると目に着くはずだが、不可思議だ。
呂国が狙いなのか…?」

「わかりません。
あと、城の壁には変な旗がありました。」

「旗だと?」

「はい、あれは国旗のような…。
記してあったのは龍が円を書いている印で、真ん中に『仁(じん)』と書いてありました。」

「仁…聞いたことがないなぁ。
春麗、わかるか?」

「う〜ん、そうねぇ…。
私が気になったのは旗より一晩で城が建った事が魅力的だわ。」

毘禅様と彫雲は顔を合わせた。

「どういう事だ?
もしかして術でなら一晩で建立することが出来るのか?!」

「一晩で建てる事は出来ない。
でも、術が関係してるのは確かかもしれないわ。」

「そうか。
わかりそうか?」

「…解決出来ない事もないわねぇ。
もしかしたら小さな家でなら一週間あれば今回の城と再現できるかもしれない。」

「頼む。」

「そのかわり、土地と兵三人借りるわね。
あと、二日間部屋への出入りは禁止!
何かあれば水晶で見ているから心配しないで。」

「わかった。
土地は好きにしてくれ、何かあれば私が全責任を負う。
兵は牢獄兵を使って貰って構わん。
今はもうあれがいないからな。」

「ありがとう。
迷惑はかからないようにするから。」

「うむ。」

「じゃっ、早速取り掛かるわね。
彫雲も長旅ご苦労様、今日はゆっくり休みなさいね。」

「はっ!」

そう言い、春麗様は出ていかれた。
「彫雲よ、実は重大な話がある。」

「はっ!
何でございましょう?」

「実は…。」

と言いかけたその時ドアをノックされた。
「爽貴です。」

「入れ!」

「失礼します。
…彫さん!」

「久しぶりでこざいます。」

「おかえりなさい!
何時帰って来たんですか?!
あっ!関与を呼んで来ないと!!」

「関与には今し方会いましたよ。
大きくなられましたね。」

「爽貴、これはどうしたのだ?」

「連れて来ているわ。
入って。」

「毘禅様…これと言うのはもしやっ!」

「今話をしようと思っていたのだ。
そろそろ調教をしていこかと思っている。
これは綺麗に髪の毛を切り整えられていた。

きちんと空いてくれているからだろう、爽やかに整った顔立ちに見える。

『殺セ…五年前ノ親父ヲ殺シタノハ緋色ノ目ノ者…殺セ…殺セ…コロセ…。』

「……ッ?。」

急に彫雲は下を向き表情がおかしくなった。

「彫雲…やはりお前は反対だったか…。
無理もない。」

彫雲は毘禅様の言葉すらわからず自分でも目が血走り、体中の血管が腫れ出した。

「…せ…。」

「う〜む、やはりまだこれを出すのは早かったのか…?」

「セ…緋色ノ目ノ者ヲ殺セェェェッッ!!!」

急に豹変した彫雲は剣のつかに手を置き猛スピードでこれに近付いた。

これは爽貴を抱え込み彫雲の攻撃を裂けて床に転がった。

「爽貴、大丈夫か?」

こんな状況にもかかわらずあの時の様に涼しい顔をしていた。

「ありがとう。」

「彫さん!!
止めて!!」

爽貴様は声を張りあげるが全く届くはずもなく、横たわっているこれに留めを刺そうと剣を逆さに向け両手に持ち直し振りかぶった。

「危ないッッ!!」

振り落とした瞬間『キィィン』という何か高い音が響いた。

「…彫雲…止めるんだ。」

毘禅様は宥めるように囁いた。

「…爽貴、大丈夫だ。」

これの声に思い切りつむっていた目を開いた。
爽貴様が見たのは毘禅様が彫雲と剣を交えていたのだ。

「起きれるか?」

「うん。でもお父様が…。」

「爽貴、あの人の名は彫雲だったかな?彼は術によって操られている。」

「どうやって?」

「わからない。
ただ救えるのは君のお母さんだけだ。」

「わかった!
お母様を呼んで来るわ!」

「待て爽貴!」

その時、剣を交えている毘禅様がどこか辛さを耐えるような声で爽貴様を止めに割って入られた。

「春麗は今仕事中だ!
自ら一週間部屋には近付くなと言われている!」

「じ…じゃぁどうするの?」

「…仕方ない。
璃燕を呼んで来るんだ!
北館三階に居てるだろう。
いなかったら南館二階に行きなさい!」

「わかりました!」

「俺も行く。」

二人は外に出て北館へと向かった。

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