第39章


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「目覚めて……しまわれたのですか……」
 巨体を子どものように怯え震わせ、嘆くようにパルキアが呟く。
「いや、完全には目覚めてはいない。おぼろげな半覚醒の意識の中、幼子の激しい感情に同調して力を与えている」
 呼吸を張り詰めさせてギラティナは答える。
「ええい、貴様らが腕輪をおとなしく渡しておれば、かようなことには!」
「あなたの独断が最もたる原因でしょう!」
 言い争う二匹の間を、凄まじい勢いの光弾が過ぎ去る。
「……我らが争う時ではない。怒りに任されるままに暴れられては世界が危うい。どうにか隙をつき、腕輪だけでも底から掬い上げて暴走を止めねば――」
 アルセウスを思わせる形をした光は、後ろ足で地を蹴ってふわりと浮き上がる。
『”消えちゃえ!””滅せよ!”』
 二重に響く咆哮を上げ、光はギラティナとパルキアに向かって加速する。顔から零れ続ける光の粒子が、宙に二本の帯を引いて残した。

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