第39章


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潔癖な輝きは穢れを一切寄せず、影は光の表面に沿って滑やかにさけていく。
最後の一層が破れ視界が開けた途端、前方から取り囲むように黒い尾を引きながら襲い来る赤い棘。
「待ち伏せです、振り落とされぬよう!」
 パルキアは急激に速度を上げ、俺はその手の内に張り付くように掴まって体にかかる強烈な重力を耐え忍んだ。
身を翻して間一髪の所をすり抜けると、そのままパルキアは攻撃の大本である長大な白金の竜、ギラティナに向けて渾身の雄叫びと共に降下を仕掛ける。
 身の芯まで揺るがされるような衝撃。凄まじい力の波がぶつかり合い、激流のような飛沫が迸った。
二柱は互いに弾かれるように身を離し、体勢を整え睨み合う。

「あなたの企みもここまでです、ギラティナ。主の御体と宝玉を返し、投降しろ」
「貴様も力を取り戻したか、パルキア。だが、それも無意味よ。もう止められん」
 言って、ギラティナは俺の方を見やる。
「そやつに脅されでもして無理矢理連れて来られたか。難儀であったな、ピカチュウ。さあ私に腕輪を渡すが良い。重荷を代わろう」
 またギラティナの声は甘く優しく、慈愛に満ちているように響いた。だが――もう惑わされん!
「見縊るな。今ここに俺がいるのは、俺自身の意思だ。この程度、いずれ世界の覇者となる俺には重荷ですらない。お前などに代わってもらう必要など皆無!アブソルを返せ!」
 
「……豪儀なことだ。だが、肝心の助けられる側の意思はどうであろうな」
 暫しの緊迫した沈黙の後、ギラティナは意味深げに呟く。
「どういう意味だ?」
 ギラティナは何も答えず、傍らの床に影の門を広げた。そして、その中から現れる、見覚え有る白い姿。
「アブソル!」
「ピカチュウ……」
 俺の声に応えるその声色は、威厳や尊大さなど微塵も無い、純粋な、子どもらしいものだ。
 ――良かった、無事に目を覚ましていた!
 思わずパルキアの手の内から飛び降り、様々な感情を胸に俺は駆け寄る。だが――
「来ないで!」
 次にその口から飛び出したのは、拒絶だった。


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