第43章


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「アンタとそのガキの間柄だって、何だか一癖二癖ありそうじゃないのさ」
 ニャルマーは口端を邪に歪め、マフラー野郎をずいと見下ろす。
「さあて、アタシらの話は終わったんだ。そろそろアンタの話を聞かせてもらおうか。他人様の生き様に
さんざケチ付けてくれたんだ。お礼にアンタのもじっくりと査定してやるよ、ねえ、ヤミカラス」
「おうよ、聞きてえ事は山ほどある」
 あっしは同意してマフラー野郎に詰め寄る。
「……はは、お手柔らかに頼むよ」
 マフラー野郎は乾いた笑みを浮かべた。それから一拍置いて、マフラー野郎は覚悟を決めるように
息を整えた後、もう一度改めて口を開く。
「俺が産声を上げたのは、某国の軍が所有する施設の一つだった」
 あっしはハッとしてマフラー野郎を見上げる。
「そうだ、ヤミカラス。俺もまた、君と同じように、生まれる前から運命を決められた身だったのさ」
 マフラー野郎は力なく苦笑する。
「物心がついた時には、濃い硝煙と炎、生臭い臭い漂う戦場に立たされていた。
山のように大きく屈強な重量級達――主にドサイドンや、ボスゴドラ等、怪獣型のポケモン達だ。
奴らの足音と咆哮はいまだに時折、夢にうなされる――が闊歩して大地を揺るがし、
空を飛び交う竜達が雨霰の如く無数の流星や燃え盛る火炎を降り注がせていく。まさにこの世の地獄だ。
だが、俺はその地獄を幾度も生き延びた。淡々と命ぜられるまま、目の前の敵を討ち続け、生き残り続けた。
自軍を勝たせるため、同胞を守るため、国のため、そんな使命感は一切無く、それが生まれてきた意味ならば
果たすまで、と割り切っていた」

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