第39章


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「嘘だよ、そんなわけない。だってボク、すごいことなんて何も出来ないもの」
「お前は既に気付いている。己の異質な力に。それが周りに及ぼした影響に」
「そんなの知らない、分からないよ」
 動転した様子で、アブソルは首を横に振るう。
「……目覚めさせる過程で、お前の記憶を少し垣間見た。ただのアブソルの子に、長く生きた氷鳥を屠る炎は吐けん。洞窟を丸々飲み込むような大水を呼び寄せるなど叶わん」
「あれはピカチュウが、ピカチュウの付けた腕輪が光って、ボクに――」
「腕輪が力を貸した、それこそ何よりの証拠だ。神と、認められた者にしか神の輪は扱えぬ」
 突き付けられた事実の重圧に、アブソルは返す言葉も無く、ふらふらとその場にへたり込んだ。

「ボクは、どうなるの?」
 金色をした仮面のような頭部の暗い隙間に宿りかけた沈痛な光を押し隠し、ギラティナは重く口を開く。
「アルセウスを目覚めされば、お前としての記憶、存在は消えてしまうだろう」


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