第33章
[09]
「グッド」
コピーロゼリアは心の中でほくそ笑む。着実にロゼリアはコピーロゼリアのペースに呑まれようとしていた。
「さあ、どこからでもかかってくるといい。何一つ、小細工無しでお相手しましょう。
あなたは気にせず卑怯な手をいくらでも、遠慮などせず、ご自由にどうぞ、オリジナル。
それでも僕の足元にも及ばないでしょうから、フフフ」
コピーロゼリアは嫌味たらしく笑い、刺突剣を構えた貴族のごとく気取った仕草で、針先をロゼリアへ向けた。
コピー達には絶対的な自信があった。自分達はあらゆる面において、元になった者達より勝っている。
どのような手段で戦おうと、負けるなど有り得はしない事だと確信していた。
それが、そのように造られたコピー達の、ただ一つの存在理由でもあった。
「あまり見くびると痛い目を見ますよ……!」
両手の花から剣針を伸ばし、ロゼリアは真直ぐに突きかかっていく。ピカチュウと同様、既に敵の術中に
完全にはまってしまっていた。ピカチュウとロゼリアは普段であれば、すぐに頭に血を上らせて
しまうような直情的な性質では無い。それはロゼリアの方が更に顕著だった。だが、自分自身と
相対するという異常極まる事態に動転し、二匹は自分を見失っていた。
向かってくる針先を、コピーロゼリアは両手の剣針を交差させるように構えて受けとめ、押さえ込んだ。
そして、そのまま捻るようにして、ロゼリアの右手の針を中程からへし折った。
ロゼリアは動揺しながらも、残った左手の剣針で間髪入れずに斬りかかる。しかし、今度は片手の
剣針だけで滑らせるように受け流され、よろけてしまう。
その隙にコピーロゼリアは、ロゼリアの喉元に切っ先を突き付けた。
「一本です、よ。あっけないですねえ」
ロゼリアの頬を冷たい汗が伝う。だが、コピーロゼリアはそのままとどめを刺すことなく、
ロゼリアを突き飛ばして転ばせ、距離をとった。
「まだまだこれからですよ。まだ針は残っていますよね? 早く立ち上がり、新しく伸ばせ。
完全に心をへし折ってから、ゆっくりとどめを刺して差し上げます」
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