†壱章/尚早†
[04]侮
ぐっ…!!
苦しいっ!!
思い切り腹に何かが直撃した。
−−−うっ!!
今度は全身に降りかかってきた!!
重い…!!
これは、
まるで、
そう、人間が…‥。
「ぎぃやぁあぁぁああ!!」
目の前にある金髪、イケメン青年に情けないながらも僕は叫んだ。
「うるっせえなぁ‥…。」
まるで目覚まし時計かの様に顔面を全力で叩かれる僕。
自慢じゃないが、鼻は高いんだぞ。
短くなったらどうしてくれる。
そう思いながら、昨日の出来事を順々に思い出し、納得した。
取り敢えず学校がある為、敷き布団と彼の間から脱け出そうとした僕の元に都合悪く妹がやって来た。
騒がしく扉が開く。
「てめぇ、黙れ、こら!!糞兄…」
あ、説明が遅れました。
僕の妹はお腐さんです。
「ば、ちょ、だだだ駄目だろ!!そんな、うん、ゴメン。」
「伶羅!!っ誤解!!誤解だからっ!!」
来た時とは裏腹にゆっくり扉を閉める妹。
嫌だ。
これからホモ野郎として誤解されたまま生きていくのは真っ平御免だ。
「待てよ、伶っ…‥!!」
僕は、布団の中に引き込まれた。
それは、妹の目にしっかり映っており、僕は否定どころか肯定した様な形になってしまったのである。
「射場さんっ!!」
僕は必死で起こそうと肩を揺すった。
すると、肩は震えている。
僕が揺すっているからではない。
笑っているのだ。
いや、最初から起きていたのだ。
コイツ…
最悪だ。
「なんで、最初から起きてくれなかったんですか!!」
僕の必死な問い掛けを無視して笑い続ける。
非力な癖に殴ってやろうかと思った程だ。
「俺、アイツ苦手だったからさ、どうにかして敬遠させたかったんだよなぁ。」
その為に僕を利用したのか、この野郎。
僕は溜め息しか出なかった。
コイツをまだ侮っていた様だ。
一生の不覚。
「いつから起きてたんですか?」
恨めしげに僕は彼を見た。
「ベットからお前に落ちた時、完っ全に起きたな。」
地獄に堕ちろ。
心底思った。
「もぉ、最悪ですよ。これから妹の顔見れないじゃないですか。」
「気にすんなよ。それより学校だろ?早く準備しろ。」
年上だから仕方ないけど、なんでこんなに上からなんだ。
でも、言ってることは正しいのでしぶしぶ従う。
これからこんな日が続くのかと思うとうんざりした。
嗚呼。
太陽は眩しいな。
朝日に目を細めながら呟いた。
「おはよう、父さん。」
「紘慈、射場君、ご飯!!」
母さんの声がする。
僕は射場さんより先に部屋を出た。
これから慌ただしい朝が始まる。
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