第41章


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 あっしが言う傍で、やれやれと言った様子でマフラー野郎は裾を払いながら起き上る。
「大体の向かった方向さえ知れれば十分さ。行動が盛んになる前は、ニューラ達はそのシロガネ山脈の
近辺に現れていたんだろ? きっとその傍に本拠地はある」
「その程度、団員共や俺様だって分かってるっての。だが、シロガネ山脈は広大で険しく、
複雑に入り組んでやがるんだ。そこから手がかりも無く当てずっぽうで探し出すなんて、とても無茶だ」
「幾ら逃げ足の速いニューラ達だって、ゴーストポケモンのようにすっかり姿を消せるわけじゃああるまいし、
必ずどこかで誰かに姿は見られているはずだよ。例え人間なら立ち入らないような場所でも、野生のポケモン達は
至る所に暮らしている。人間にはその言葉は分からず聞き出そうともしないだろうけど、同じポケモンである
俺達には分かる。君はもう野生のポケモンなんだ、ヤミカラス。こういう利点は活かせるようにしていかないとな」
 マフラー野郎の言葉に、あっしは思わず目が覚まされたようになってハッとする。そういやそうだ。
人間に長らく飼われていたせいで、考え方も人間寄りに凝り固まっちまっていたが、あっしはポケモン、
それも今日から『野生の』になるんだ。どうにかその世界に順応していかなきゃならねえ。
「分かったよ、そこらの奴に聞き込みしながら行きゃいいんだな。地面に鼻と目を擦り付けるよりは現実的だな」
「どの道、アタシもこのままじゃあシンオウにも帰れず、行く当ても無いんだ。右も左も分からない地方で
また新たな拠り所を一から見つけるのも難儀さね。まだアンタらについてくよ……」
 ニャルマーは半ば諦めたような気落ちした様子を見せながらも、その場から腰を上げた。

 あっしらは痕跡の続いていた先の方角を真直ぐ目指しながら、近場に見かけたホーホーやメリープ――
丸っこい梟と、黄色い綿毛の羊みてえな奴らだ――といった比較的話の通じそうなポケモン達に、
ニューラ共の集団を見かけなかったかと片っ端に聞き込みながら進んでいった。それでも、しっかりとした
目撃情報は殆ど無く、こんな調子じゃ本拠地を突き止めるまでいつまでかかるか分かったもんじゃない。



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