第43章


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 ミュウは猫じゃらしみたいに膨らんだ尻尾の先をきゅっと抱き込んで顔を少しうずめた。
『そうなったら君達はつまらないとか寂しいとかも一切感じることもないのだろうけれど。
もしかしたら、そうなってしまった方が君達にとってはいっそ楽なのかもしれないって、
思い始めていたんだ。今だって、ボクらの争いに大勢の子が訳も分からずに巻き込まれて、
利用されて、苦しんでいてさ。ボクがやってきた事はボクの単なるエゴ、わがままであって、
君達にとっては余計なお世話なんじゃあないかってね。しかーし』
 ミュウは唐突にがばりと尻尾から顔を上げ、俺をびしっと指差す。
『そんな風に思い悩んでいた時、君は現れた。この争いの為に生まれ、最前にて育ってきた、
まるで戦禍の申し子みたいな君が。これはもう話を聞いてみるっきゃないよね。
本音を言えば、直接姿を見せるのはドッキドキだったの。
彼らの息のかかった密偵の可能性だってあったわけだしさ。特にぱるぱるってば、
そういう影でこそこそするのが好きだから。村で見せてる普段の様子だって、
もしかしたら猫を被っているだけかもしれない。あ、鼠が猫を被るって何だかおかしいね、ふふ。
ま、結局は杞憂だったわけだけれど。
 それで、君は言ってくれたよね。この世界もまだまだ満更じゃあないって。
ホッとしたよ。君のような境遇の子も、良い部分を知ればそう思ってくれるんだって。
中には当然こんな世界嫌いだって子もいるだろうけど好きでいてくれる子だってちゃんといる。
ならボクももう少し頑張ろっかなーって思っちゃうよね、うん』
 気合を入れ直すようにミュウはぐっと拳を握って、胸の前に構えた。


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