第43章


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 何故そんなことを聞くのかと疑問に感じたが、ミュウの真剣な様子を見て、
俺は真面目に思いを巡らせてみた。
”戦いの渦中で俺はこの世界の残酷な面をまざまざと目にして味わってきた。
かつての俺が同じ質問をされたとしたら、何の躊躇いも無く嫌いだと答えていただろうね。
だけど、あの子に出会って、この村で沢山の人々やポケモン達の優しさに触れて、
残酷なだけが世界の全てじゃあないって知った。だから、はっきりと好きとは言えないけれど、
まだまだこの世界も捨てたものでは無いんじゃあないかなと今は思う”
 俺の答えを噛み締めるようにミュウはうんうんと頷く。
『それだけ言ってもらえればボクには充分。この世界とそこに住むみんなってばさー、
君が見てきた通り、残酷で辛辣でどうしようもなくひどい面もあれば、
ちゃんと優しくて温かい面もあるんだよね。一体、本当の顔はどっちなのか
分からなくなりそうだけど、どっちも本当の顔、真実なのさ。
一人一人一匹一匹にそれぞれの形や思いや感情があって、その多数が無数に触れ合うんだから、
全部が全部隅から隅までうまくいく筈がないよね。でも、だからって、
全てみんなおんなじ形と考えにしちゃったら、誰とも関わる意味も必要も無くなって、
確かに誰も争う事は無くなるかもしれないけれど、そんな世界絶対につまらないし寂しいよ』

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