第43章


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 しれっとそう言って、ミュウは手を差し伸べた。
”……ひとが悪いな”
 俺は苦く呟いて、その手には触れずに自力でゆっくりと重苦しく感じる体を起こす。
ミュウは宙ぶらりんの手を所在無げに握々とさせてから、仕方なさそうに引っ込めた。
『もー、ごめんってばー。そんなに怒らないでよ。ボクだって悪いとは思ったけれど、
君の意思を確実に見極めたかったのさ。ま、ここまで突っつかれても考えが変わらないなら、
君の思いはホンモノって事だよね』
 ミュウは顎に手を当て、今一度の確認めいた視線を俺に送った。
俺は複雑な面持ちでそれを見返して小さく頷く。
『うんうん、良かった良かった。これでボクもぎらちー達もひとまず安心だよ』
 ミュウは奥の元々は厳格な祭壇だったらしき飾り台の上に鎮座している、
まるでクリスマスツリーみたいにメルヘンチックに飾り付けられた物体をちらりと見やった。
それから俺の方に向き直り、何だか少し改めた調子でこう切り出した。
『ねえ、もう一つ確かめたいんだけれど』
 一体なんだろうと俺は首を傾げた。
『この村で暮らしていきたいって君は言ったね。ということは、君はこの村が好き、
ひいてはこの世界をまだ好きでいてくれているって思ってもいいのかな』



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