第43章


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 物というものは必ず何か材料となるものがあってこそ成されるものだ。
キュウコンという九つ尾の狐のようなポケモンは千年は生きるといわれているけれど、
無から有を生み出したり、国一つを滅ぼすような力があるなんて聞いたことが無い。
過去にギャラドスという青い龍型のポケモンが暴れて大きな都市が壊滅的な被害を被ったなんて
記録があるらしいけれど、ただ怒りの向くままに破壊する事しか興味の無い彼らが
もしも無から有を生み出せたとしても、有効に使う機会も考えも無いだろうな。
 まったくもって人知もポケモンの力をも超越した規格外、常識外れ、超自然的な存在、
それではまるで――。
『さーて、ボクばっかり喋ってるのもなんだし、そろそろ君にも色々聞いていっちゃおっかな』
 溺れ迷う思考がとりあえずの取り付く島に手をかけようとした寸前に、
先程の仄暗い影が見間違いだったかのようにけろりと明るい調子でミュウは俺に言った。
『さっきのはほんのおとぎ話さ。難しく考えずに軽く聞き流しておいてよ、今のところはね。
今、一番大事なのはさ、戦争の原因は国同士がボクを巡って争っているから……つまり、
言い方、見かたを少し変えればボクが原因だ、とも言えるってことじゃないかなー? 』
 再びミュウの顔に小さな虫を弄ぶみたいな意地悪い笑みが薄っすら浮かんだ。
『さあさあ、そのものズバリと根掘り葉掘り、歯に衣着せずにずずいと聞いちゃおう!
 そんなボクがたった今、目の前にいて、手を伸ばせばすぐに届く位置にいて、君は何を思うの?
 そして、どうしたい? だってさー、君が色々延々と辛い思いをしてきたのは、
ああ、君の友達は”今も”だね、ボクがいつまでも逃げ隠れているせいとも言えるんだよ?』

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