第43章


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家来達は失意に暮れる王様を慰め、また再び国を創りなおしました。
しかし国とその民達が辿る道は結局また同じ。王様が怒って壊してしまいます。
それでも家来達は何度も何度もめげずに試行錯誤して創り直しました。
でもやっぱり最後には王様が気に入らぬと壊してしまいます。さしもの家来達の中にも、
延々と続く繰り返しに心の疲弊を感じ、王様に不満を抱く者も出てきました。
ある時、王様は考えます。いらぬ諍い、争いが起きるのは、民達に余計な感情を
与えてしまっているからだと。ならばそんなものは全て奪い去ってしまえばいい。
王様は家来達に言いました。今再びこの国は壊し、今度は感情の無い者達だけの国を創ると。
家来達の中の不満を抱いていた者達が王様に猛抗議しました。だけれど、狂気に侵された王様は
まるで聞く耳を持ちません。不満を抱いていた家来達は陰ながら集まって話し合いました。
もう王にはついていけない、あの方は完全に狂ってしまわれた。でも、王様の力はとても強くて、
自分達が束になったって正面からじゃあかなわない。そこで家来達は一計を案じました。
無敵に思える王様にも唯一無防備になってしまう瞬間がありました。それは国を破壊する寸前、
破壊する為の力と、同時にまた新たな国を創りだす為の力、相反するものが交わるその一瞬。
危険すぎる賭けでしたが、彼らには最早それしか手段はありませんでした。
そして、遂に訪れる決行の時。空間が卵の殻のようにひび割れ、時が激流の如くうねり狂うその中で、
彼らは王様と側近の初めに生み出された家来三人の隙を付いて飛び掛り、
王様の力の素となるものをバラバラに分けて一斉に持ち去ってしまいました。
かくして、王様は力を失い、その狂気は防がれたのです。めでたしめでたし――で終われれば、
どんなにいいことか……。王様は今も尚、側近の初めに生み出された三人の内の二人と共に、
その狂気を一層深化させて裏切り者達を血眼で追い続けているのでした。めでたくなしめでたくなし』


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