第43章


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国には王様と家来だけではなく、少しずつ民達も暮らすようになっていきました。
王様と家来達は民達を手厚く守り助け慈しみ、民達も王様と家来達を敬い愛し、
とても仲良く暮らしていました。しかし、その幸せは永遠に続くものではなかったのです。
民達は王様達の加護もあり、その数をどんどん増していきました。王様はその姿にとても満足し、
家来達と共に民達を静かに見守るようになります。民達はその間もどんどんどんどん増えていき、
やがてその数は国の半分以上を満たす程にまで膨らんでいました。しかし、繁栄の一方で、
民達の間には少しずつ段々とどこかぎくしゃくとした空気が流れるようになっていました。
自分達の数が増えすぎて、ひとりひとりの住む場所や食べるものが減っていったのです。
その内、ぎくしゃくとした空気ははっきりとした敵意になり、争いが起こるようになりました。
王様は慌てて飛び出していって、彼らの間に入って止めに入りました。
しかし、彼らは誰一人としてそれに従うことなく、あろうことか王様を巻き込んで戦い始めました。
王様にとってはほんの少しの間、彼らを陰ながら見守っていただけのつもりでしたが、
民達にとってはそれはそれはもう長い時間、王様がまだ民達と共に暮らしていた頃は
まだ赤ん坊だった子がその時にはもう曾々々々々々……お爺さんになっているくらいの
年月が経っていたのです。民達は王様の事を誰一人として覚えてはいませんでした。
だけど、民達とは違う時空に生き、死ぬことも歳をとることもない王様はそんな事は分かりません。
王様は深く嘆き、とても悲しみ、激しく怒り、可愛さ余って憎さ百倍となって、
国ごと民達を滅ぼしてしまったのです。

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