第43章


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”それは……! はい、俺にも出来ることがあるのなら、喜んでやらせていただきます!”
 願ってもない絶好のお誘いに、俺は是非手伝わせて欲しいと飛び付いた。
『いい返事だの。そんじゃ、早速今日から来てもらおうかい。ついて来な――』
 かくして、俺はその日からドテッコツ爺さんのところの木の実園で働く事になったんだ。
俺が任されたのは主に苗木の世話や採れた木の実の選別だった。
後は偶に忍び込んでくる虫ポケモンや、いたずらぼうず達を追っ払ったりだな。
初めは慣れない作業に失敗ばかりで、ドテッコツ爺さんの雷鳴のような叱咤叱責が
しょっちゅう轟いたもんさ。
 それから、もう一つ役目ができた。あれは仕事から帰って夕飯の用意が出来るまでの間、
食堂に転がっている人間の子達が置き忘れた物であろう子ども向けの本を、
やれやれ仕方ないなと拾い上げて、何の気なしにぱらぱらと捲り読んでいた時の事だ。
遊びから帰ってきたポケモンの子達がそんな俺の姿に気付き、急に駆け寄ってきた。
何事かと見回して訊ねると、ポケモンの子達はもしかして人間の文字が読めるのかと、
期待に目を輝かせて聞き返してきた。
 軍隊で人間に混じって生活していると嫌でも彼らの使う文字と言うものに触れる機会があって、
簡単な単語と文章であればその意味を理解できるようになっていた。
 少しだけなら、と俺が答えると、子ども達はうきうきと顔を見合わせた。
その次に、せーのと声を合わせ、その本に書いてあること読んで聞かせて! と、求めた。
 ポケモンの子達の姉代わりであるシスターにも多少は文字の心得があって、
たまに彼らに本を読み聞かせることもあるようだが、他の家事雑用で手一杯なことも多く、
彼女も中々そんな暇がとってあげられないと言うのが現状なようだった。


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