第43章


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 夕飯のお呼びがかかるまでの間、一匹俺は自室のベッドに腰掛けてぼんやりと過ごした。
なるべく何も考えないように無意識に努めていたのはきっと、久々の外出の疲れもあったろうが、
無闇に頭を働かせる事で風が運んできたあの忌まわしい臭いと、伴う暗澹たる不安を
思い返してしまうことを恐れていたんだろう。
 やがて、静まり返っていた部屋にコンコンとドアをノックする音が出し抜けに飛び込み、
空白に近くなっていた意識は風船を針でつつかれたみたいにびくりと慌てて飛び起きた。
夕飯の準備ができたとドアから顔を覗かせる彼女に、すぐに行くよと俺は平静に応えた。

 彼女の後について食堂を訪れると、他の者達は既に席に着いて俺が来るのを待っているようだった。
集まっている面々は、牧師と見知らぬ若い女性――例のいつも教会の手伝いに来てくれているという
村の女性だろう――と、朝に庭で遊んでいた人間とポケモンの子ども達、それとゾロアークの姿もあった。
 牧師は俺の姿に気付くと、皆に注目するように声をかけた。
『さあ、今日の主役の到着だよ。静養の為に紹介できるのが遅れてしまったけれど、
少し前からここで一緒に暮らしていた私達の新しい仲間だ。皆、仲良くしてやってくれ』
”ああ、その、どうもよろしく”
 紹介にあずかり、俺は精一杯練習の成果を搾り出して挨拶した。
牧師はパチパチと笑顔で拍手し、他の面々もそれに続いた。
その中で唯一ゾロアークだけは不機嫌に腕を組んだまま俺に鋭い視線を向けていたが、
彼女にじろりと睨まれ、渋々周りに合わせて手を打ち鳴らしていた。

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