第43章


[114]


 今までまるで縁の無かった光景に、物珍しくて俺はついついきょろきょろと礼拝堂を見回していた。
特に目に付いたのが、ずらりと整列する長椅子達が一斉に正面を向けている最奥、
窓に嵌め込まれた色とりどりのガラスで形作られる絵画――ステンドグラスというのか――だった。
大きな三角形の中心に巨大な円、底辺側の角の両内側に二つの小さな円があり、
左下の円の中には四肢と一対の大きな翼をもつ煌びやかな真珠色をした二足の竜。
――何分、神など信じる性質ではなかったし、懐疑的な目で見ていたせいもあるかもしれないが、
その一つの澱みも許さず磨き抜かれたような流麗な姿は、過ぎた潔癖さと冷酷な印象を抱かせた――
右下の円には屈強な四肢と背に大きな扇状のヒレがある暗い紺色をした四足竜、
――その如何なるものも弾き返してしまえそうな力強い姿は、あまりに無機質で冷淡にも見えた――
そして、中心の最も大きな円には何とも名状し難い、純白のしなやかな体躯に、
後光かはたまた身体の一部か金色の輪を背負った、”何か”が描かれていた。
その”何か”は二頭の竜の特徴を掛け合わせたような、それでいて竜とも獣とも判断しかねる姿だが、
全体のシルエットとしてはメブキジカやギャロップのような蹄のある四足獣に近いだろうか。
こちらを荘厳な面持ちで見下ろす様は、どこか傲慢で独善的に思えた。
〈あのステンドグラスに描かれているのは、この世界を創り出した神様とその御使い様だそうです。
左の円に御座すのが空間を司るというパルキア様。右の円に御座すのが時間を司るというディアルガ様。
そして、中心の一番大きい円に御座すのが、その御二柱を産み出しこの世界を創り出したという、
全知全能のもの、万物の父であり母であるもの、創造神アルセウス様――〉
 ?々とステンドグラスを見つめる俺に、横から彼女が描かれている者達の意味を教えてくれた。

[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.