第41章


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「あなた達を無事に助け出せて良かったです。でも、奴らに巣穴の場所を突き止められてしまった以上、
もうあの巣穴には戻れませんね……。どこかに行く当てはあるのですか?」
 心配そうにロズレイドはオオタチに尋ねる。
「それなら、あの巣穴は仮住まいでしかなかったので、心配には及びません」
 そうオオタチは答えた。
「仮住まい?」
「ええ、私達の本来の住居は二十九番道路沿いにあるのです」
 ロズレイドはごそごそとジョウトの地図を広げ、その場所を確認する。二十九番道路は、
ジョウトの南東外れにある道路だ。
「僕達が今いるのは、そこから北西の三十一番道路付近……お子さんを連れた散歩にしては少し遠出ですね」
「はい、私達は三十九番道路に住むというミルタンクさんに会うために旅をしている最中なのです」
 三十九番道路――地図でその位置を確認して、ロズレイドは少し驚いた。三十九番道路はジョウトの北西外れ、
二十九番道路からは相当な距離がある。
「一体、どうしてそんな長旅をしてまでそのミルタンクさんに会いに行こうと?」
「彼女達の出すミルクはとても栄養があると聞き及び、そのミルクを分けてもらおうと……」
「あのね、おとうさんがね、げんきないの」
 しゅんとしてオタチが答える。
 隅でそっけない様子で黙ってやり取りを聞いていたマニューラの耳が、ぴくり、と微かに反応した。
「主人が病に臥せているんです。それで、少しでも滋養をつけてもらいたくて……」

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