第43章


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 彼女に対して当り散らすような態度を取ってしまったことも何度もあった。
それでも彼女は献身的に俺なんかに尽くしてくれていた。
その姿に俺はますます罪悪感を煽られ、追い詰められるように感じて、
意固地になっていってしまった。無価値な屑同然の俺のことなんてとっとと見殺しにして、
どこぞなりと打ち捨ててくれればいいのにと、どうすれば彼女は俺を嫌ってくれるのか、
最低のど壷に嵌まり込んでいた俺は頭を捻り、一つ思い当たった。
そうだ、あの事を話してしまおう。今まで、彼女に恐れられては面倒だからと
――嫌われたくなくて――ひた隠しにしてきたあの話。
彼女が軍へと捕まる原因となった森の火災は、俺が故意に放った雷が原因であること、
それからそれから、他にも今まで戦場で行なってきた”黄色い悪魔”の非道の数々を包み隠さず。
俺は全てを彼女へとぶちまけた。
 次に彼女の表情に浮かぶのは恐怖か蔑みか怒りか、俺はぜえぜえと息を荒げて待った。
しかし彼女は取り乱すことなく、〈最初から、知っていました〉と、少し曇った微笑みを返した。
”え?”と驚き竦み、俺は硬直した。
〈こんな片田舎ですけれど、森に住む方々や渡り鳥として立ち寄られる方々から、
様々な風の便りを耳にします。その中でも、世にも恐ろしいという『黄色い悪魔』の噂は、
どうやら私の同族らしいということもあって強く印象に残っていました〉

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