第41章


[106]


 戸惑うオオタチに、ロズレイドは脅かさないよう落ち着いて事情を説明した。
「そ、そうだったのですか。私ったら、ごめんなさい、まさかニューラ族の方に助けていただけるなんて
思わなくて……。もう何とお礼を言っていいか……」
 誤解が解かれ、オオタチはまだ少し怯えを見せながらも深々とマニューラに感謝する。
「別にいーよ。礼ならしつこくオレを急かしたこいつらに言いな」
 マニューラは気が無さそうにふいと顔を背け、布切れの巻かれた左腕でロズレイドの方を指した。
「は、はい。本当にありがとうございます。ほら、坊やもこの方達にお礼を言いなさい」
 オオタチは自分の影に隠れているオタチに促す。オタチはもじもじしながらひょっこりと顔を覗かせた。
「ありがと、バラのおにいちゃんと、クロネコの……えーと、うーん――」
 オタチは少し困ったようにしてマニューラを不思議そうに見渡す。マニューラは煩わしそうに頭を掻き撫で、
舌打ちした。
「マニューラ、でいい」
「うん、ありがと、マニューラさん」
 礼を言うオタチに、ふん、とマニューラは再び顔を背ける。悪態をつきながらも、
マニューラの横顔はほんの少しだけまんざらでもなさそうにロズレイドには見えた気がした。


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.