第41章


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 オオタチ親子を担いだまま、ロズレイドとマニューラは鬱蒼とした森林を駆け続けた。
地形が起伏に富み始め少しずつ森が開け始めた頃、二匹はぜえぜえと息を切らした様子で
徐々に歩を緩める。
「もう充分、撒けただろ。ちょっと休むぞ」
 肩で息をしながらマニューラは言った。はい、とかすれて声にならない声でロズレイドは応じる。
オオタチ達を地に降ろすと、二匹は大きく息をつきながら風船が萎み込むようにその場に
ぐったりとしゃがみ込んだ。
「ったく、手間かけさせやがって」
 荒く呼吸を整えながら、マニューラは縛られたままのオオタチ達を横目で見やる。
オオタチはびくっと身を強張らせて、怯えた目で見返した。
「うう、私達をどうつもりなの……」
 震える声で問うオオタチに、マニューラは面倒そうに立ち上がり、無言で爪を構えて寄っていく。
「ひ……、私はどうなってもいい、でも子どもだけは許して……」
 今にも振るわれんと翳された鋭い刃のような爪を前に、オオタチは全てを諦めてぐっと目を閉じた。
数回の風を切るような音の後、痛みも何も感じずオオタチは怪訝に思って恐る恐るゆっくりと目を開く。
すると、自分達には傷一つ無く、縛られていた蔓だけがぱらりと切れ落ちた。
「あ、あら?」


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