第43章


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 牧師はバッグから診察道具を取り出し、てきぱきと俺の状態を診ていった。
俺はなすがまま抵抗せずにその様子を見ていた。牧師は冷静に診察しながらも、
時折微かに表情を曇らせているようだった。きっとあまり良い状態ではないのだと直ぐに読み取り、
先程彼女が言っていた、後遺症で以前ほど体の自由は利かなくなるかもしれないという言葉が
更に研ぎ澄まされて再び喉元に突き付けられた。
『じゃあ、ちゃんと安静にしているんだよ。目が覚めたんだから自由に動き回りたいだろうけれど、
それはちょっとしばらく我慢して、少しずつ少しずつ動けるようになっていこう。
なあに、焦る事は無いさ。ここには君のように傷ついて住処を追われた子達が他にもいて、
暮らしている。だから、君もずっとここに居てくれていいんだからね』
 包帯を取り替え終えると、牧師はゆっくり丁寧に俺に言い聞かせて、部屋を出て行った――。

「ちょっと待った!」
 あっしはとうとう堪らず横槍を入れる。
 マフラー野郎は「なんだい?」と片眉を上げた。
「おいおい、その牧師と”シスター”が言ってやがったことがマジってんなら、
今のオメエは一体なんなんでえ? 確かに、その、ひでえ傷跡があるのは見ちまったが、
オメエの振る舞いやら戦いぶりを見てても、とても後遺症があるようには見えやがりゃしねえぞ?
 まさか二人にフカシをこかれたってことかよ?」


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