本編「〓Taboo〓～ﾀﾌﾞｰ～」①

[39]chapter:10-2 

階段を一段一段駆け上がるたんびにｷﾞｼｷﾞｼと音をたてる。
古びた木々でできた階段は今にも朽ち果てそうだ。
だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
ｴﾄﾞﾜｰﾄﾞを先頭に、三人は二階へと駆け上がり、大きな音をたてて、ドアを開けた。
　
天井に吊り下がるﾗﾝﾌﾟが部屋を照らす、とても少女らしいとは言えない薄暗い質素な部屋だが、ｱﾝﾃｨｰｸな小物が戸棚に置かれたり、ﾃﾃﾞｨｰﾍﾞｱがﾍﾞｯﾄﾞに置かれたりして、辛うじてﾏﾘｰらしさを残していた。
　
部屋の中にﾏﾘｰの姿はない。代わりに漆黒のﾏﾝﾄに身を包んだ人間が一人窓の前に立っていた。
ﾏﾝﾄは、頭から覆われていて、顔は見えないが、身長は160ｾﾝﾁ位に見える。
　
「誰だ貴様は!?」
ｴﾄﾞﾜｰﾄﾞがまず第一声を放った。
黒ﾏﾝﾄはｴﾄﾞﾜｰﾄﾞ達の方を見ず、ﾍﾞｯﾄﾞの上に置かれた、黒い大きな布をかけられた何かを見つめている。
黒ﾏﾝﾄは布の下に手を入れ、スッと持ち上げた。
　
「この娘はもらっていくよ...」
　
黒ﾏﾝﾄ小さくそう言うと、窓に足をかけ、外へと飛び出した。
　
「なｯ...！」
三人は同時に声をあげた。
　
ﾗﾙは素速い動きで窓へと走り出した。続いてｴﾄﾞﾜｰﾄﾞ、そしてｳﾞｧﾝが。
　
「あいつ...！」と、ﾗﾙは窓から身を乗り出しながら言った。
　
「マ、マリー!!」
ｴﾄﾞﾜｰﾄﾞは動揺した様子で、汗を額に浮かばせている。
　
「准将!!落ち着いて下さい!!まだマリーだと決まったわけでは..」
「キャアアアアアアアー!!」
　
ﾗﾙの言葉を否定するように、外からの少女の悲鳴が鳴り響いた。
　
「...くっそｯ...！」
ﾗﾙは窓の外に飛び出した。
ｴﾄﾞﾜｰﾄﾞも続いて、窓に足をかけようとする。
　
「准将!!お待ち下さい!!私とｳﾞｧﾝくんで追いかけます!!准将は家でお待ち下さい!!」
　
ﾗﾙはそう言ってｴﾄﾞﾜｰﾄﾞを制止させた。
　
「そんなわけにいくか!!」
「必ず助け出します!!私を信じてください!!」
　
二人は一秒もしないような少ない間で、一瞬だけ目を合わせた。
そこには常人には計り知れない何かが、二人の間に流れたのだろうか。
ｴﾄﾞﾜｰﾄﾞは小さく頷き、足を下ろした。
　
「ｳﾞｧﾝくん!!早くするんだ!!」
「は、はい!!」
　
ｳﾞｧﾝは手に持つ剣を肩にかけ、窓から飛び出した。

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