〜第4章〜 黒の男


[30]昼4時48分


え…!?
それって

「どういう意味だ?」

「そういう意味よ。お前が一番普通って言いたいの」
冷静に考えるんだ、僕。
なんで、清奈が
【あの】清奈が
思わせぶりな発言をするんだ?
いや、これは僕の過大解釈ってことか?
確かに僕はクラスの男子の中でなら、誰よりも清奈を知っている自信はある。
けれど、清奈が僕の事をどう見てるかなんてこれっぽっちも考えていなかった。
清奈は、余りにも敷居が高すぎて、初めから追い求めてなどいない。

しかし、その姿はさくらちゃんに全く退けをとらない。
故に、僕は、清奈に対する感情は……

まさか、まさか、な……
都合のいい一人妄想はこれぐらいにしておこう。

「相沢く〜ん」

と、ここでハレンが登場した。

「ごめんなさい、ちょっと掃除当番が回ってきたので〜。あ、先輩も今日は一緒なんですね」

「まあね、することもなくなっちゃったし。ところでこいつは今どんな感じ?」

「とても順調ですよ!」
「順調……なのかな?」

昨日はパルスに、僕が気絶するほど修行につきあって貰ったわけだが、結局コツは掴めないまま、なわけだが。

「へえ、順調なんだ」

清奈は微笑む。
しかし、例によってこの微笑みは喜んでいる、わけではない。そろそろ清奈がどういうことを口に出すか予想がつくようになってきた。

「じゃあ、どれぐらいまともになったか、試してあげる」

そう、これは
俗に言う『かわいがり』と言うやつだろう。

「え、先輩が戦うんですか!?」

「大丈夫よ。約束通り、変身したりしないから」

言うと清奈は

上着を脱ぎ始めた。

「それじゃ」

下に着ていた黒いシャツ。英字の柄が入っていて、なかなか洒落た服装をしている。

というわけで、今黒いシャツとこの学校の制服の赤チェックスカート姿になる。

上着を投げ捨て、屋上の隅にあるこじんまりとした鉄の扉を開けた。

「なんか、武器になるものは無いかしら?」

奥に入り、ゴソゴソ物音を立てて段ボールの山をどかす。


「武器って言ったって……」

「この際細長いものならなんでもいいわ」

「細長いもの……」

一応、見つけた。

「竹ぼうきがここにあるぞ」

「それでいい」

清奈は、そのまま箒を受け取りさっさと部屋から出た。
片づけぐらいしろよ。

「後で直すから。それよりも悠、早くするわよ」

「あぁ」

さて、どうするか。
今僕はバトルモードになり、背広がとても長い白コートを着た。
パルスを、がっちり握っている。
清奈はというと、既に準備は出来ている。

「私に一撃を与えてみなさい」

「いいのか?」

「構わないわ」

ハレンが側でじっとその様子を見つめる。

「じゃあ……行くぞ!」

今まであれだけパルスと戦ったんだから、一撃ぐらい清奈に与えられるはず!


ゆっくりと空気が止まるの待って
立て続けに3発撃った。

金属音が響く。


さすが、だ。
清奈は3発撃って、全て弾き飛ばす。
持っているのは竹ぼうきにも関わらず、だ。
普通折れる気がするんだが。

《銃弾をかするように弾いています。だから、威力が竹ぼうきに分散し、折れていないのです。つまり、完全に動きを読まれています》

な、パルス、そうなのか!?

「そういうこと。だから、もっと本気を出さないと、傷なんかつけられないわよ」

そのセリフの後、

ばっと僕にめがけ一直線に突っ込んできた!

「く……!!」

清奈は左利き、だから箒は僕から見て右にある。

瞬間で左に逃げ!!

「って、あれ?」


バシッ!!
頭上に、竹ぼうきの柄を叩き付けられた音だ。

「っ――――!!」

おもいっきり叩き込まれたらしい。脳に鈍痛が走る。

「近づかれたら終わりってわけ? それじゃあ意味がないじゃない」

でも、あれは無理があるぞ。
僕がパルスで清奈に向けて撃った、構える一瞬の隙をまるで予測していたように清奈は突っ込み、僕が左に避けることも全て先読みしていたかと思うぐらい、見事に攻撃を決められた。

ああ、自分で言ってて思う。普通に言い訳がましいなと。

「ダメよ、ダメ。見てから行動したら間に合わないの。常に先のことを考えなくちゃ戦いにならないわ。今のじゃ及第点以下よ」

先のことを考えろ、か。そんな予言師のようなこと出来るかよ。

ああ、
僕に、清奈の次の手が分かるように、【一瞬先の未来が見えたら苦労しないのに。】




夕方まで続いたその修行(と書いて『かわいがり』と読む)は、さらに体を疲弊させた。思えば、今日は朝から散々な目にあっているわけだ。
今日何しに学校来たんだ?さくらちゃんから銀色のアクセを貰い清奈から徹底的にシゴかれたわけですね。

そうだ。
色々あったせいで危うく忘れるとこだった。
あのことを聞かなきゃ……。

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