秘密の放課後


[30]先輩の部屋


先輩の家は、学校から歩いて10分くらいのトコロだった。
大きな二階建ての家で敷地内に小さな家があった。
「まぁーこの二階建ての家が俺ん家なんだけど、俺はこっちの離れに住んでる。入って。」
鍵を開けて部屋に招かれる。
いかにも男の子の部屋って感じだった。男の人の部屋って初めてだったから緊張した。
コンクリートの壁。フローリング。少し雑に並べられた雑誌とCDの山。外人のポスター。ギター…。知らなかった先輩が見えてくる。
「ごめんな…部屋汚くて。」
「いぇ…全然おかまいなく。先輩音楽好きなんですね。」

「ん?あぁ。CD見せてもらっていぃですか?」

「どぅぞ」
見てもあんまりわかんなかった。見た事ない外人の歌手と曲ばっかだった。
「アタシ邦楽しか聞かないからあんまわかりません。」

「ん?洋楽もいいよ。歌詞とか何言ってるかアンマリわかんないけど、曲だけでもスゴイ迫力あるしさ。これとか知ってるかもよ?」
先輩は、一枚のCDをかけだす。

「あっ!これコーラのCMですよね。聞いた事ある!」
「そうそぅ。こんな感じね。」
そう言うと先輩はギターを音楽に合わせて引き出した。
「わー。すごい!!」先輩は、慣れた手つきでギターを掻き鳴らす。素早いうごきで弦を押さえながら。
「アタシなんか…リコーダーくらしか楽器できませんよ。」
「まぁ…何も音楽に携わらなければそうだろうな。」
先輩の奏でるギターの音を聞いていた。
「俺…麻咲ちゃんの事さぁ…マジだからね。」

「えっ…。」
先輩の手の動きが止まった。
「好きだって言ってんの。」
先輩がアタシの目を見る。
「アタシは…。」

「いぃよ。答えはわかってるからさ。少しずつでいいからさ。少しずつ俺のこと考えてる時間が増えていってくれると嬉しい。無理に忘れろなんて言わないから。それだけ誰かの事思えるって素晴らしい事だと思うしさ。」先輩が複雑そうに笑う。
顔に先輩が手を伸ばす。
「いつか気持ちも一つになれると嬉しいよ。」
そう言いアタシに軽くキスをした。
いつもとは違うキスでなんかくすぐったかった。

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