〜第4章〜 黒の男


[28]昼12時7分


「先生は最高です!」

「うん」

「先生は世界3大美女にも勝る可愛い方です!」

「そうそう!」

「先生は、ダントツ世界一!!」

「イェスイェスイェス!! さすが相沢、私の良いところに気づいたか!」

ここらへんで打ちやめしよう。
そう自分の中で勝手に決め、弁当を頬張ることにした。

カーテンが風で揺れる。

「お、あ、くそ」

そのせいで激しく揺れるカーテンに巻き込まれた先生。

「カーテンの分際で私を拘束するな!」

カーテンに指を差した。
どうやらこの先生は、指差す対象に命の有無は考えないみたいだな。
もの言わぬカーテンはまだブワブワとなびき、先生と格闘している。

外は雨だけでは無く、風も強くなってきたらしい。

「先生、窓を閉めればいいんじゃないんでしょうか?」

埃が舞ってる。
やめてくれ。

「そうか、いいことを言うじゃないか!」

先生は窓を閉め、再びここに戻り、ベッド上に飛び乗る

「ちょっ!飛び乗らないでくださいよ!」

「はは……スマンスマン!」

笑ってごまかした。
それにしても忙しい人だな。
怒ったり笑ったり。

すると……

「悠くん!」

本当の、美女がやってきた。
「ああ……さくら」

「よかった……福原くんから話を聞いたんですけど、大丈夫ですか?」

ふっくん、グッジョブ。
礼は後で沢山くれてやるぜ!

「うん、大丈夫だよ。なんていうか、ちょっと無理しすぎたみたい」

「無茶は体を壊しますよ、だから適度に休憩しないと……」

「ああ、ごめん。わざわざ心配かけちゃったな」

「謝らなくてもいいですよ。それにしても無事でよかった……」

ホッと安心するため息をして、さくらちゃんは紙袋から何かを取り出す。

「ん、これは?」

「ほら、昨日、思いを伝えてくれたじゃないですか」

「……うん」

「な……思いを伝えたってどういうことだ!」

割り込んできた先生。

「それで、これ、悠くんに似合うかなって思って……」

これは……
おお!
銀色のミサンガ型のアクセ!

水晶が埋め込まれている、なかなか豪勢なやつだ。
そしてさくらちゃんは、僕の右手首に巻き付け、留めてくれた。

「ありがとう! 大事にするよ!」

こういうプレゼントを貰えるなんて、何年ぶりだろう?

しかも相手はさくらちゃんだぞ!
嬉しくないわけない!
余りに嬉しいので強調表現をしてみました!
「おい、貴様ら!!」

っと、ここで先生が一言もの申すようだ。

「まさか、貴様らは恋人か!!」

大声で言わないでほしい。恥ずかしいですから。

「ま……まあ、友達以上には……」

と言ったところで

ボンという音。
ベッドが衝撃をいくらか吸収し、上に跳ねる。

「貴様ぁ! 私が一番じゃなかったのか!!」

先生!
落ち着いてください!
乗らないでくれ〜!

「あ、あの、テレサ先生……」

さくらちゃんが止めにかかるも、先生(テレサ先生?)の余りの剣幕で、どうしようもできない。

「違うんです先生! 先生は余りにも美しすぎて、僕のようなただの高校生とは釣り合わないからですよ!」

そう叫んで
やっと止まった。

「なんだ、それならそうと早く言えばいいのに〜」

満面の笑みを浮かべ、ベッドから降りるテレサ先生。は〜死ぬかと思った。

「では、だな」

またも、ビシッと指を差される。

「私と、ここにいるさくらとでは、断然私の方がいい、ということだな!」

嫌な質問をひっかけてきやがった。
それは、さくらちゃんと自分の命、選ぶならどっちって聞いてるようなものだぞ。ここでいいえとか言ったらさぁ……。
僕はちらっと、さくらちゃんの方を見る。

駄目だ。うん。
その可愛く、これからも愛していきたい瞳の為なら、自分の命だって投げだせる。

「いいえ」

と言って、再び死を覚悟した。








その後
僕はどうやら死には至らなかった。
といっても、これは途中見舞いに来てくれたふっくんと原田のおかげであり、もし二人が来なかったらどうなってたかは分からない。

僕はテレサ先生の怒りを買ってしまい、放課後になった途端追い出されてしまった。
というわけで今、教室にあるカバンを取りに行こうと廊下を歩いているところだ。
風はまだ続いていて、雨のせいで更に気温が下がり、肌寒い。僕の体力が残り少ないせいもあるが、心の芯の芯まで冷やされていくような心地だ。
雨に紛れてろくでもないものが現れなければいいんだが。


教室に入る。
僕の席を見ると……

「っ!?」

異様な光景が広がっていた。
異様というか、奇妙というか。

そう、そこには
僕の帰りを待っていたであろう男どもが群がっていたのだ。
理由はもちろん、例の件についてであろう。

「み……皆、どうした?」

やばい、気が見えるぞ。
すざまじいオーラだな、おい。

[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.