第37章
[28]
「待った。その程度では納得がいかん」
ターバンのように包帯がぐるぐると巻かれた痛々しい頭をさすりながら、チャーレムが重い腰を上げる。
「善意を踏み躙られた上、殺されかけたのだぞ。もっと重い罰を与えるべきだとは思わんか」
そして、両手の指を鳴らしてヤミラミを睥睨しながらチャーレムは言った。
ヤミラミは冷や汗を吹き出させながら縮み上がっている。
「……今回の件は儂にも責任がある。そなたを止めることはできない。
気の済むようにするがいい。ルカリオ殿はどうなさりたい?」
ハガネールの問い掛けに、ルカリオはゆっくりと立ち上がる。
そして、無言でヤミラミに詰め寄ると、首根っ子の辺りを掴み上げた。
「ゆ、許してくれ! もう絶対にこんなことはしないと誓う!」
今にも失神しそうなほど震え上がりながら、ヤミラミは必死の形相で命を乞う。
「その言葉、誠か?」
表情一つ変えないルカリオの言葉に、ヤミラミは取れてしまいそうな程に首を縦に振るう。
「どうせその場しのぎの嘘に決まっている! まさかとは思うが、情けをかけてはいかんぞ、ルカリオ殿!」
「そうですよ、師匠! こんな奴、野放しにしちゃダメ!」
チャーレムとミミロップが囃し立てる。ハガネールは祈りを捧げるように、ただ目をぐっと閉じた。
何分にも長く感じられた一瞬の沈黙の後、ヤミラミの体はどさりと地で音を立てた。
「――!?」
まだ生きているのが信じられないと言った風に、ヤミラミは自分の体とルカリオを交互に見回した。
「ゆけ! 次に悪事を行った時が最期だ。私は地の果てからでも聞き付けて駆け付け、お前を始末する!」
ヤミラミの体にかすりそうな程にすれすれの場所へ拳を突き立て、ルカリオは吼える。
悲鳴を上げ、ヤミラミは転げるようにして逃げていった。
「な! なに逃がしちゃってるんですか、師匠ー!?」
ミミロップは非難と驚きの入り交じった声を上げる。
「もはや奴らは完全な腑抜けだ。誇り高き拳を汚す価値は無い」
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