本編「〓Taboo〓〜タブー〜」@


[22]chapter:6-3


ヴァンは自分の手を握り締めた。
 
「..僕は..覚悟がどういうものか、まだ分かりません...でも..ラルさん...ユスティティアは禁忌を防ぐのが仕事だって..言いましたよね...?」
「...ああ..」
「...僕は..兄さんに裏切られて..スゴく悲しかったです...ビルのお母さんも、理由は知らないにせよ..自分の子が死んで悲しくないわけないはずです...」
 
ビルのご親族にシンのことは伝えられていない。
ヴァンは昨日ラルからそう聞かされていた。
理由は詳しくは教えてくれなかったが、おそらくシンの犯した「禁忌」というのが関係しているのだろうと、ヴァンは思った。 
「多分まだまだ知らないことがたくさんあると思います...正直ユスティティアのこともなんだかよく分かりません」
「...ユスティティアでない君にはまだ何も話せない。そういう決まりなんだ」
 
ヴァンはラルを真剣な目で見つめた。
「『禁忌』というものが..あんなにも悲しいものなら...僕は...もうあんなことは起きて欲しくないです...
だから、僕はその『禁忌』を防ぐ道を歩みたい...」
「...辛く..険しい道が君を待っているぞ...?」
「...それでも..やります..もう僕の前で悲しいことは起きて欲しくない...僕も..もう悲しみたくないです...」
 
「最終確認だ。君は軍に命をかけることを誓い、『ユスティティア』へと入隊するか?」
 
「...はい」
 
「..よく言った..ヴァン=シルウァヌス」
 
ラルが少し笑った。ヴァンは何故かその笑顔に暖かみを感じた。
 
 
「...そろそろ聖歌が終わるな...」
「..はい.....」
 
ビルの棺に土がかけはじめられた。周りの皆は、静かにそれを見守っている。
 
ヴァンとラルは手を使い、体の前で十字を二回描いた。
 
「..アーメン......」
 
 
 
 
 
 
 
 
「実を言うと君にはユスティティアに入るしか道は残されていなかった」
「え?」
 
ラルは家に向かう途中突然言い出した。
 
「当たり前だ。君はあの『シン』と名乗ったウロボロスに顔を見られたまま逃げられたのだ。奴らはまた君を襲ってくるだろう」
「ひぇ...また..」
 
ヴァンは身震いした。
「じゃ、じゃあなんで..ぼ、僕に入隊するかどうかなんて聞いたんですか?」
 
「..入るしかないにせよ、君の意志は聞いておきたかった..入らないという選択の道を残したままでだ...」
「は..はぁ...」
「君はあの禁忌の夜を踏み越えて、ちゃんと自分の道を選んだ。
それが一番の結果だ」
 
ラルはまた笑顔を見せた。
「は、はい!!」
 
──なんだろう
 
不思議な気持ちだ...
 
ヴァンにはそれがなんだか分からない。
 
「すまないが急がなければ行けない。今日中に出発しなければ」
「ええ!?もも..もうですか!?」
「..伝達係のやつが情報をミスってな...あいつらはいつもそうだ!!」
「ひぃ!」
ラルは突然取り乱し始めた。
 
「三日で着くと言ったくせに、本部からここに着くのに一週間以上かかったわ!!...と、とにかく..三日で考えていたから本来はもう本部に着いていなければいけないのだ。だからすぐにここを発たなければ」
「は、はい。分かりました。すぐ出発の準備をします」
「すぐだ!!」
「は、はいぃ!!」
 
 
 
こうして、
今日僕は、人生で初めて自分の意志で自分の道を決め、
「ユスティティア」の道へと歩むことになった。
哀しき禁忌を防ぐべく、神の領域を踏みしめて。
 
 
chapter:6 その夜をふみ越えて
 
 
〜to be continued...

[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.